[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.21
『晩秋… 散りゆくものの光景』
11月21日、東京。自然が少ない大都会東京も気をつけて見ると、街路樹や公園の樹木、民家の庭の植木など結構多彩な緑がある。全て人手の入った自然であるために、変化に富んだ眺めを楽しむことができる。
大都会の緑は四季それぞれに街並み景観のアクセントになっているが、晩秋に黄葉して、これから散って行く時間を待っている木々の姿は、最も深い風情を感じさせてくれる。日々色彩を変化させていく最後の華やかさの中に侘び寂びに通じるものがあり、それに感情移入しそうな自分を見いだすこともある。命を終える寸前を華やかに紅葉していくものもあれば、樹上で朽葉色に変わっていくものもある、散りゆくものの寂しさの風景。これも大都会のなかの一つの景色通信であろう。(永田泰弘)
銀杏に桜や欅、プラタナス… 池の中の落ち葉にも季節を感じる。
[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.20
『伊勢神宮 門前町の色彩景観』
環境色彩研究会のイベントで、焼き物の町常滑の町歩きのあと、INAXライブミュージアムの見学と後藤泰男氏による色とタイルに関する講演を聞き、最後にイタリア料理を味わうというぜいたくで楽しい一日を過ごしたあと、ひとりで伊勢神宮内宮の門前町の色彩景観を見ることを目的に伊勢市を訪ねた。
明治34年に始まった伊勢市の景観行政への取り組みは、昭和11年に風致地区を定め、近くは平成21年に景観計画の策定が行われ、おはらい町通りを中心に修景保全が続けられた長い歴史がある。ここでは、神社建築に代表される素木づくりの「生成り」文化が反映され、灰色の伊勢瓦を葺いた屋根に、外壁は下見板張りを基本として、一階には軒がんぎ板、二階には張り出し囲いをもつ切妻・妻入りあるいは入母屋・妻入りの家並みづくりが展開されている。
門前町の中にあたるおかげ横町は観光客を対象とした食べ物屋を中心に据えたテーマパーク的な界隈が形成され、日曜日のせいもあって人が溢れていた。
江戸時代のお伊勢参りは、お蔭参りとも言われて庶民の楽しみであり、盛況の波が幾度も繰り返されたと伝えられている。その庶民の娯楽の現代版が町づくりの形をとって演出されており面白く感じた。
常滑のやきもの散歩道は、20数年前に訪れた時に較べ、窯業の町から観光の町への変貌は大きいものの、お伊勢参りと違って、求心の核となるべき窯業が衰退すれば、観光の目的すら消滅することに繋がりかねない危惧を感じた二日間であった。(永田泰弘)
おかげ横丁の中心にあるおかげ座では昔の伊勢参りが再現されている。
食べ物屋やみやげ物屋をひやかして歩くのも楽しみのひとつ。
看板や暖簾を見ているだけでも時間の経つのを忘れるほど。