[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.27
『希望をはぐくむ色』
大空へぐんぐんと伸びているスカイツリーは、もうじき400mを超える。
足もとの業平橋付近では、日に日に見物客が増えているらしい。近くから建設中の塔を見上げていたら、まるで生き物のように感じられた。新名所になることは明らかだが、周辺の家並みとのギャップが景色として面白い。時間があれば、観光ルートが出来上がる前に眼に焼き付けておくべきだろう。色即是空と唱えたくなる程に空になじむデザインだと思う。夜間照明で観る姿も、さぞ美しいだろうと想像できる。船に乗って水上から眺める、少し贅沢な観光にも人気が出てきたようだ。その成長を見守る瞳には未来が輝いているかもしれない。
一方で、東京タワーの夜間照明の演出にも興味をひかれる。今年、南アフリカで開催のワールドカップ日本代表を応援する、青色のライトアップが試合の夜と翌日の夜に行われている。ジャパン・ブルーの演色は、見慣れた姿からの一時的な変身であっても、人々に新鮮な印象と驚きや感動をあたえてくれる。道行く人々も日本イレブンの活躍を期待しながら、自らも希望が湧いて前向きに歩いていけそうな気持ちになる。(加藤進久)
それは、大空に溶け込むように伸びている。
ふたつのランドマークの意味性を想いながら歩くのも一興。
[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.26
『東急我孫子ビレッジの景観』
東急我孫子ビレッジは、1975年に千葉県我孫子市に東急不動産により造成・建設された集合住宅約1000戸、戸建住宅約1000戸の複合団地である。
東急設計コンサルタントからの要請で、カラープランニングセンターが集合住宅のカラーデザインを委託され、プロジェクトに参画した。私にとって原点になった仕事の一つであった。途中、塗替えが行われた際も当初の色彩が踏襲されており、35年を経た現在も建設時の理念が継承されていることは、嬉しい限りである。外装色彩設計はランクロ氏に指導された環境色彩調査の手法を用い、周辺の建物や土や植物などの調査を重ね、野山や畠などで構成されていた我孫子の土地の記憶を土の色をモチーフとして、個人の住居の位置をも伝えるサイン性を持ったカラーデザインとして、高層棟3棟、中層棟17棟からなる外壁面に採用して、統一感がありながら画一化されていない、落着いたイメージの景観を創造している。30余年を経過して樹木が繁り、日々管理され補修されてきた外構により住みやすい環境が保たれている。管理組合の理事の方々は、これから30年間は立て替えること無く、10年後の大改修に備えたいとの方針を示しておられる。大改修時の塗替えのために、早い時期に現状の色を記録し、必要に応じて建設時の姿に戻るように、色彩基準を文書化して後の世代に伝えることが、日本における集合住宅の色彩設計の記念碑的な景観を、色彩文化あるいは都市の文化に高めることであると、言いたい。(永田泰弘)
落ち着いて歩ける心地よい道路空間
環境色彩を分析することで生まれる色彩設計
土地の記憶は土の色がモチーフ