[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.30
『虹雨の降るまち』
虹雨(にじさめ)という表現は馴染みがうすい、というよりないかもしれない。時の流れを通じて育まれてきた日本人の季節感や磨かれ続けた感受性は、数千種あまりの季語をもつことにも現れている。雨がつく言葉からは、それぞれの異なる風景を想い描くことができる。南北に伸びる日本の大部分の地域では、はっきりとした四季がある。降雨は豊かな自然環境と多様な樹木の育成をうながすためには必要なものだ。ある特定の季節や時刻にしか体験できない色々な雨が日本にはある。五月雨、時雨、にわか雨、夕立…。
ここハワイでは冬季の朝に、山側から風とともに雨雲が、まるでシャワーを降り注ぐように海の方へ移動して来て、朝日の影響で巨大な虹を見ることが多い。そんな時には、南国の花と緑を一緒にしたような雨の匂いも深呼吸して欲しい。レインボー・ステイツとして親しまれていて、運が良ければ太陽の周りにかかる円形の虹が見られることもある。ここでは携帯電話をのぞき込む事もよいが、楽しい過ごし方として大空の雲のゆくえを眺める事に気付いている人は、いったい何人いるだろうか。(加藤進久)
朝方の雨と一緒に、時には三重になった虹を見ることができる。
早朝に降雨があり、しだいに目映い光の中に虹がでる。
貿易風が吹き抜ける熱帯の植物の色香は時に強烈だ。
オーシャンフロントに立てば、その群青に眼もくらむ。