一般社団法人日本色彩学会 平成29年度研究会大会
6研究会合同研究発表会 シンポジウム
「いまあらためて『色差』を考える」

2017年11月26日(日)14時〜16時

色彩を扱うおよそすべての分野で,「色差」という言葉はそれぞれの意味をもって用いられている. すなわち,2つの「色」が「異なる」あるいは「異なって見える」とき,わずかに違っているのか, それとも大きく異なっているのかを「量的に」示すために,「色の差が小さい/大きい」という表現を用いる. ところが,このわざわざカッコ書きした部分(「色」,「異なる/異なって見える」「量的に」)の解釈や現場での適用は, 分野によって大きく異なり,おなじ色彩専門家の間でもしばしばコミュニケーションの齟齬をきたしている. 本シンポジウムでは,それぞれ立場が異なる3人の専門家から「色差」についてお話を伺い, パネルディスカッションやフロアディスカッションを加えて,われわれが正しく/適切に「色差」を考えるための道しるべとしたい.

プログラム

司会:鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)

●講演1:CIEにおける「色差式」の発展 矢口博久(千葉大学名誉教授)

CIEの測光測色の標準化は1924年の標準分光視感効率関数V(λ),さらに1931年のXYZ表色系の制定に始まった. しかし,光の物理量に対して線形なシステムであり,明るさ,色感覚といった非線形なものを表すことができなかった. そこで,CIEでは色差で代表される色の感覚量を表すシステムを実現する議論,開発が継続的になされ, 1960年の(u, v)均等色度図から始まり,1964年のU*V*W*, 1976年のL*u*,v*, L*a*b*そしてCIE2000色差式に至るまで,発展してきた. ここでは,このCIE色差式の発展とその問題点,照明の分野で重要な演色性評価の新しい試みである色忠実度指数への色差式の導入, さらに画像工学分野で重要な「画像差」についても紹介したい.

●講演2:物体色を対象とした色差式の背景と、質感に関する最近の計測機器 大住雅之(オフィス・カラーサイエンス)

1970年代以降,測色機器の高精度化と利便性の向上により,数値による色差管理が、繊維やプラスチック, 塗料といった多くの産業分野で利用されてきた.その間,工業製品はより多彩なアピアランスを意匠の付加価値として求め, その結果,品質管理上の色差判定も,より高次元の判断を要求されるようになってきた.今回は,物体色の色差判定の背景をはじめに, ゴニオアパレントな色彩の代表である,メタリック・パール色の色差管理の状況を,ドイツ工業規格DIN6175-2から派生した Audi2000色差式等の海外の諸事情を含めて紹介すると共に,最近の質感に関わる計測機器や,将来に向けての質感差等の話題を提供する.

●講演3:化粧品分野における肌の"色"と"質感"に関する評価事例 五十嵐崇訓(花王)

肌の外観は,化粧品分野を含む様々な学術・産業分野において重要な研究対象である. この中で,肌の外観を決定する重要因子の一つである色・質感の特徴を把握するためには, 肌の平均的な明度・彩度・色相といった観点からだけではなく,"肌ならでは"の特徴・特性を考慮した評価が求められる. 例えば,毛穴のような肌の凹凸・色むら・光沢などは,個々人の肌の外観に差異を生みだす主要な視覚的因子となる. そのため,これらの因子を考慮して,肌外観の差異が生じる要因を評価することがしばしば必要となる. 本発表では,このような色・質感に由来する外観差に関連する"肌ならでは"の研究事例を紹介する予定である.

●パネルディスカッション パネラー:矢口博久,大住雅之,五十嵐崇訓

●フロアディスカッション


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