景色通信Vol.36『外国人だったら』
- 環境色彩研究会
- 2012年02月02日
景色通信Vol.36
『外国人だったら』
これまで生活してきた日本の地域の中で、移り住んでみたいところはどこだろう。南北にのびた日本は、地域によって文化がかなり違う。生まれ育った東京以北から関西以南への地域移住には、大きな環境変化をともないそうだ。最近になって、もしも自分が外国人として生まれていたら、京都近郊に住んでみたいと考えることがある。なぜかといえば、まちの色に落ち着きや地味さがあり、自然の豊かさや伝統の大切さを、日々の暮らしの中で感じることが多いように思うからだ。若者文化や流行のみに傾倒しない、成熟した大人の文化をあきらめない心意気か。グレー系やモノトーンを大事にしているから、スポットカラーも活かしやすい。広告看板などは厳しいルールで管理されるようになると、四季の味わい深い自然の色も尊重されるようになってゆく。秋の古都周辺では、紅葉という繊細な日本の美が、それを愛でる者を癒しながら無心の境地へと誘ってくれる。それらは、もてなしへの心配りあるこの地を訪れた観光者と生活者双方にとって好ましい。また、昼と夜とで別々の顔を見せる風景は、河原のせせらぎとともに訪れる人々を虜にして、気分を高揚させる仕掛け効果にあふれている。回遊性という空間プロデュースは、遥か昔の町づくりにも活かされていたようだ。そういえば京都とパリは姉妹都市の関係にある。かの地を訪れた時にも、モノトーンの世界に個性的な色彩を取り入れるのが上手いと感じることが多かった。(加藤進久)
おもてなしの玄関、活気ある京都駅ターミナル
夜陰のせせらぎとほのかな灯りに眩惑される
パリと京都市は姉妹都市。モノトーン系が感性をくすぐる