景色通信Vol.45『空海の気配につつまれて』

  • 環境色彩研究会
  • 2013年02月06日

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景色通信Vol.45
『空海の気配につつまれて』

寺社仏閣のある地域を訪れることが多くなった。これは精神世界や祈りに対する興味だけでなく、仏の道を追求することに生涯をかけた人物への尊敬が、年齢を重ねるごとに増しているからだろう。参詣への旅に駆り立てるのは、良質な映像番組だけでなく、その寺ゆかりの偉人を深く描いた書籍からの影響が多い。鉄道とケーブルカーを乗り継いで標高1000mの地へ向かうのは、年輩の人や外国人も多く、紅葉のシーズンでも家族連れはそれほど多くはない。その昔、参詣者は誰もが山道を一歩一歩、時間をかけて登った。明治5年に女人禁制が解かれた高野山には、ひとりで訪れている外国人の女性もいた。弘法大師に少しでも近づきたいという思いで、日本だけでなく世界中からやって来る参詣者は、これからも後を絶たないだろう。
およそ4000人が生活する高野山の町並みは、地味ながら穏やかな色調を保っている。その昔に弘法大師空海が目に留めたかもしれない、樹木の葉が風に吹かれてゆれている。赤、黄、緑の色彩が混じり合って、キラキラと生き物のように輝いて見える。地、水、火、風、空という五つの要素を心から感じとるには、まだまだ時間をかけて思想する必要がありそうだ。(加藤進久)


ひとりの修行僧であっても神々しいお姿だ


燃えるような紅葉の色が冴える六角経蔵


海鼠塀が通りをリズミカルに彩る高野の町


その昔、女人はこの辺りから遠くの伽藍を拝んだ