景色通信Vol.51『京都の裏路地を歩く』

  • 環境色彩研究会
  • 2013年09月17日

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景色通信Vol.51
『京都の裏路地を歩く』

この夏、何年かぶりに車で家族一緒に帰省しました。そんな時は、どこか寄り道をする事にしています。今回は、京都に立ち寄り知恩院を参拝することにしました。朝も早く、開門まで時間があったので、祇園の町を散策しました。京都市の東に位置する祇園は、八坂神社の門前町であり、古くから花街として華やぎつづける界隈です。四条通を挟んで北と南では、雰囲気がかなり異なります。四条通南の弥生会館・歌舞練場近くに車を止め、花見小路通を北へ歩きはじめました。きれいに整備された石畳・紅殻格子・犬矢来はじめ、建物の外観の景観への配慮など地元商店街の努力…しかし、普段から、社寺建築に携わっている私の目には、何か映画のセットの様に見える中で、佐川急便の営業所の配慮と遊び心は大変気に入りました。
次に、四条通を北へ渡り、朝だというのに、祇園の夜の歓楽街に入りました。
昭和の雰囲気の残る飲み屋さんが多く、一見客はお断りかも?と思いながら、さらに北へ進み新橋通へ出ると私たちは、平安神宮から流れてくる白川沿いの町並みに遭遇しました。祇園らしい風情を漂わせるこの界隈は、歴史的景観保全修景地区に指定されています。蝉の声がする中、打ち水のされた石畳と流れのある通りを歩けば、先ほどの四条通の南の区域が、少しだけ作られた雰囲気が濃いとすれば、こちらは老舗の料亭などが多いせいか、古くから頑なに守られて来た時間と空間を感じます。風致維持向上計画が認定されたことで不自由もありそうですが、本物の和の空間を感じることができます。華やか過ぎる色はありませんし、たぶん色彩計画もないはずです。自然とともに木と石と川と緑や、川の中で魚を狙うシラサギとで奏でられる、何と落ち着いた空間なんでしょう。本当に「早起きは三文の徳」であると感じました。
そして白川南通、末吉町を抜けました。この裏通りもヒョイと覗くと、ウナギの寝床の様な京町屋がたくさん見られました。途中、日陰の少ない参道を歩いて、ついに知恩院にたどり着きました。観光地は、表通りより裏路地のほうが、嗅覚を鍛えるとおもしろい物を見つけられます。(山田誠司)


風趣ある地域に出店する企業。町並になじむデザインで人気上々。


伝統美を維持するため、道路の美装化など国の支援制度も活用。


おもてなし心に癒される。目が届かない所の維持管理にも気を配る。