第13回東海ヤングセミナープログラム
- 2017年03月02日
日本色彩学会東海支部 第13回東海ヤングセミナー
日時:2017年3月11日(土)14:00-15:50
場所:日本福祉大学中央福祉専門学校
プログラム
14:00-14:10 支部長挨拶 日本色彩学会東海支部長 川澄未来子
口頭発表 座長:高橋晋也
発表時間:20分程度(報告12分程度,質疑と交替で8分程度)
1. 14:10-14:30 柴田冴香(椙山女学園大学文化情報学部メディア情報学科)
「岡崎市の色彩景観に関する調査」
岡崎市は市制100周年,家康公顕彰400年記念等を契機にして,様々なまちづくりの取り組みが行われている.その中には景観整備に関わるものもあり,とくに観光の対象となる地域では一定の整備が進んでいる.一方,その対象外の地域では景観に配慮されないままの町並みも少なくない.本調査では,町の中心部や住宅地を含めたまちなみのデータを収集し,色彩の特徴を整理したが,地域の特色を活かした景観がいくつも見られる一方,色彩に無頓着な例も多くあった.また,岡崎市役所のまちづくり担当者へのインタビューを行い,岡崎市のまちづくりにおいて色彩計画がどのように位置づけられているのかを調べた.積極的な取り組みが様々にあるものの,色彩に対する専門的観点からの配慮は必ずしも充分ではないように思われた.本発表では岡崎市の景観実例と色彩への取り組み方について報告する.
2. 14:30-14:50 尾山真一(名城大学大学院 理工学研究科)
「異なる照明認識視空間がもたらす色知覚への影響」
室内空間の物体の見えを模擬できる装置D-up(Dimension-up) viewerを製作し,照明認識視空間(池田ら,2005)が異なる条件下での物体の色の見えについて研究している.具体的にはディスプレイ表示した室内空間の写真画像に対し,D-up viewerを通して観察した場合と直接ディスプレイを観察した場合とで,目視測定した色の見えがどの程度異なるかを調べている.今回は,自動車内装の一部の色彩を変化させた19種類の写真画像を用い,D-up viewer有無の2条件下でHue, Value, Chromaの値を測定し,両者を比較した.その結果,Hue, Valueには差がみられなかったが,Chroma についてはD-up viewerを通した方がより高く感じられる傾向が確認された.ただし,この結果はYR系を基調とする色彩に対して顕著にみられたものの,BG系に対しては確認できなかった.このことから,照明認識視空間の違いがもたらす色知覚への影響の大きさは,色相によって異なる可能性が示唆された.今後は,この色相効果について詳しく調べていきたい.
3. 14:50-15:10 武藤功樹(中京大学大学院情報科学研究科)
「OKQTによるカラー画像における階調数の検討」
デジタル信号はアナログ信号から標本化と量子化によって得ることができる.標本化は単位時間方向の離散化であり,量子化は信号振幅方向の離散化であることが知られている.標本化に対しては標本化定理[1]によって理論的に標本化間隔が設定される.量子化に対しては我々が提案しているOKQTが存在している.OKQTは画像信号に対して濃度値の生起確率密度関数の再現を保障可能である量子化間隔を理論的に予測するものである.この予測された量子化間隔で離散化した画像は,一般に視覚的劣化が少ないという注目すべき性質も確認されている為,濃淡画像のみならずカラー画像においても最適階調解像を検討する手掛かりが存在している筈である. 現在のOKQTではグレースケール画像に対して視覚的劣化のない画像を生成することが可能となった.そこで,カラー画像における量子化間隔の予測をすることで今まで検討されていなかったRGBの各成分の予測も行い、より踏み込んだ階調数の検討を試みることにした.
4. 15:10-15:30 土井光貴(名城大学理工学部情報工学科)
「メロンパン感性評価における感覚タイプ別の比較」
昨年名古屋で開催された色彩学会全国大会では,特別企画「先人の知恵,匠の技に学ぶデザイン思考」と連動したイベントとして,カラフルな30フレーバーのメロンパンを食べて,色・香り・味などの感性や“メロンパン”という命銘の印象などについて評価する実験を行った.合計347名の評価結果を回答者の男女別や感覚タイプ別に比較し,また,イベント後にメロンパン表面を測色して色相角⊿H°により30フレーバーの色彩を定量化した上で,評価結果との対応関係もみた.
ここでは,感性評価を2つの感覚タイプ(視覚優位タイプ・体感覚優位タイプ)の視点から比較した結果を中心に報告する.視覚優位タイプの人の方が色を明確に判断していることや,体感覚優位タイプの人は食感が他の評価に強く影響することなどがわかった. 今回は感覚タイプをごく簡単な短い質問で分類しただけにも関わらず,食品や商品に対する嗜好性がこのタイプによって大きく分かれる可能性がみえてきた.食品だけでなく,工業製品やユーザインタフェースの設計においても,感覚タイプの視点で分析することは重要かもしれない.
5. 15:30-15:50 中村恵奈(豊田合成株式会社デザイン企画部)
「人とクルマがつながるインテリア提案」
東京モーターショーでは将来に向けたコンセプトや製品を紹介し,クルマの魅力や自社技術の方向性を展示することによって子供たちに夢を持ってもらったり,会社のイメージアップを図っている.2015年のモーターショーでは未来のコネクテッドカーを想定し,より快適なインテリアのコンセプト提案を行った.提案は自動運転を想定し,光,音楽,香りを用いて人の状態に合わせた空間を演出したり,走行時の風景をより魅力的に車内に映しだすことによって移動のよろこびを感じられるモックアップを製作した.展示会場では来場者の方々に実際に乗ってもらい,体感して好評をいただくことができた.モックアップのシナリオ作り,光の色や配置,点灯方法,音楽の選定,香りの選定における試みと製作過程,モーターショーでの展示の様子などを紹介する.