≪日本色彩学会関西支部主催≫ 実践色彩講座2023「デザイン,アート,美術のなかの色彩」(第2報)

  • 2023年03月13日

≪日本色彩学会関西支部主催≫
実践色彩講座2023「デザイン,アート,美術のなかの色彩」
(開催まであと2週間となりました)

関西支部長/実行委員長 須長 正治

 毎年,恒例で開催してきました日本色彩学会関西支部主催の実践色彩講座を今年も以下のように3日間 (3/26, 4/9, 23),計3講座9講義のプログラムで開講いたします.今回は「デザイン,アート,美術」に焦点をあて,ベテランから若手まで,研究者から実務者まで,「感性」から「風土」,「表現」,そして「数学」まで,それぞれの色彩の領域で活躍されている方々を講師としてお招きしました.
 今年は1ヶ月以上遅れての実施ですが,これだけ「デザイン,アート,美術」関連の講義が揃った講座は滅多にお目にかかれないかと思います.オンライン開催となりますが,当日参加できなくても,開催後,オンデマンドで視聴できるようにもいたします.
 また,支部における事業の活性化と会員サービスに配慮し,初めて,3月4日開催の関西支部大会と実践色彩講座2023の融合を試みました.支部大会の特別講演および各研究発表のテーマは,講座受講者にも大いに興味深いものとなりました.支部大会に参加され本講座を受講された場合,講座受講料から支部大会参加費をディスカウントいたします.
 お蔭さまで支部大会には45名の参加があり盛会となりました.
 実践色彩講座2023にも,みなさんの積極的なご受講をお待ちしております.

期 日:2023 年 3 月 26日(日),4月9 日(日),4月23 日(日)<全3講座9講義>
時 間:午前/第 1 限講義(90 分,10 時 30 分 -12 時) 昼食・休憩(60 分,12 時 -13 時)
    午後/第 2 限講義(90 分,13 時 -14 時 30 分)
       第 3 限講義(60~90 分,15 時 00 分 -16 時 00 分 または 16 時 30 分)
会 場:遠隔会議システム(zoom)によるオンライン開催
定 員:80 名
受講料:全3講座受講を原則とします.いずれも消費税を含みます.
会員:16,500円 学生:8,250円 非会員:24,750円
   支部大会に参加された場合,支部大会参加費を上記金額よりディスカウントします.
*受講料は,電子請求書を e-mail の添付でお送りしますので,関西支部の口座にお振り込みください.口座情報は請求書に記載します.今回も入金をもって受講申込の受理とします.なお,企業や団体で,お支払い時期に都合がある場合はそのむねお知らせください.

申 込:件名を「実践色彩講座 2023 受講」とし,氏名,会員種別,連絡先(e-mail,郵便番号,住所,電話)を明記し,e-mail にてお申し込みください.また,支部大会にご参加の方は,そのむね記入しておいてください.
締 切:定員をもって締め切りますので,できるだけ早くお申し込みください.
申込先:日本色彩学会関西支部講座受付辻埜まで
    e-mail:tsujino@gold.ocn.ne.jp

実践色彩講座2023 プログラム
「デザイン,アート,美術のなかの色彩」

326日(日) 講座1:デザインと色彩

<講義1-1> 10:30-12:00 須長正治(九州大学大学院)
『多様な色覚特性を包摂する色彩デザインと社会デザイン』
 色彩は外界になく,眼に入る光の質的量的情報を基に脳の中で作り出される.それは個人的な体験であり,誰もが自分が見ている色しか知らない.しかし,色彩があまりにも物理的にリアルであり,あたかも外の世界にあるように思えるため,人はその実感に乏しい.脳で作られる証拠として,色覚には多様性があることが知られている.本講義では,色覚の多様性を考慮した色彩デザインであるカラーユニバーサルデザインを中心に紹介し,さらに,社会における色覚多様性を包摂する仕組みのデザインについてもふれる.

<講義1-2> 13:00-14:30 梯 絵利奈(産業技術総合研究所)
『計算美学的アプローチにもとづく色彩調和研究:アゲハチョウ科の配色分析による事例』(仮題)
 色彩調和原理の解明にむけ,アゲハチョウ科の中でも人間から好まれる種を美的対象とみなし,その配色傾向を画像解析によって分析した.具体的には,画像を色の類似度にもとづいて分類し,得られたクラスターの配色パターンを代表色の分布から判定した.この結果,美的対象としてのアゲハチョウ科の配色法則は主に対照明度,類似彩度,類似色相であることがわかった.

<講義1-3> 15:00-16:00 岩田祐佳梨(NPO法人チア・アート代表)
『医療環境でのアート&デザイン』
 10年以上にわたり,登壇者らが筑波大学附属病院や筑波メディカルセンター病院で実践してきたアート&デザインプロジェクトを紹介し,機能的であると同時に,人間の尊厳を守る空間としての医療環境のあり方を提起する.さらに,経験から得られた医療環境における色彩の役割について述べる.

■ 4月9日(日) 講座2:芸術と色彩

<講義2-1> 10:30-12:00 坂田勝亮(女子美術大学)
『色・脳・美術』
 色とは光を眼で感じることによって脳内に生じる視感覚であり,心理現象である.人間は非常に多くの情報を視覚によって判断する視覚的動物であり,人間の脳は視覚に特化するよう進化してきた.このため人類は極めて初期の段階から色を用いて表現する行為を行ってきており,これは人種や文化に関わらず全人類の特徴となっている.ここではこれらの流れを検証しながら,美術における色の使い方の展開について考察していく.

<講義2-2> 13:00-14:30 中村ケンゴ(美術家,画家)
               三木  学 (色彩研究者,株式会社ビジョナリスト)
『色彩と質感の地理学 -わたしたちの感覚を育むもの』
 日本画を専攻した中村は,その技法や画材の特性についての価値を海外に説明することが難しいと感じていました.そこで「フランスの色景 -写真と色彩を巡る旅」の編著者である三木の知見を得て,その課題を議論するべく「色彩と質感の地理学」をテーマにしたトークイベントを企画,それがきっかけで芸術色彩研究会が発足しました.
 わたしたちは,気候風土,そこから得る知覚,認知,そして言語の絶え間ないフィードバックによって文化圏特有の「色彩感覚」「質感感覚」を醸成しています.絵画をはじめとする視覚芸術,それよって構成される風景についても,近代的な色彩論だけでなく,そのような視点からも実践的な創作や批評に活かすことができるのではないかと考えています.
(講演:中村30分,三木30分,対談:30分を予定)

<講義2-3> 15:00-16:30 中川 晃(静岡文化芸術大学)
『空間表現と色彩 -プロジェクションマッピングや空間インスタレーション,舞台を事例として-』
 「空間表現」は多様であり,また,それぞれの特性や目的に合わせた色彩計画が存在します.特性や目的を捉え,適切な色彩計画の立案は視覚伝達において意味や度合いといった要素へ多大な影響を与えると言えるでしょう.
 本講座では「プロジェクションマッピング」や「空間インスタレーション」「舞台」といった映像間から実空間と多岐に渡る色彩計画を事例として取り上げながら「空間表現」を皆様と共に考えて参りたいと思います.

 ■ 4月23日(日) 講座3:美術作品のなかの色彩

<講義3-1> 10:30-12:00 鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)
『“美術作品の計量的な色彩分析”とは―小林光夫元会長の博士論文をひもとく』
 2008,9年度に日本色彩学会会長を務められた小林光夫先生(電気通信大学名誉教授,1941-2013)は,2000年に博士論文「絵画における色彩美の数理的分析の研究」(https://doi.org/10.11501/3191150)を東京大学に提出し,博士(工学)の学位を授与されました.この論文は「美術作品の(計量的な)色彩分析」に関する先駆的な研究の成果であり,いまなお多くの示唆を読者に与えてくれる優れたチュートリアルでもあります.今回は駆け足でこの論文のおおまかな解説を試みます.図が多用されていますので,数式がわからなくても,研究のエッセンスを十分感じ取っていただけることと思います.

<講義3-2> 13:00-14:30 室屋泰三(国立新美術館)
『絵画画像の中の色彩を測る』
 さまざまな絵画作品の高精細デジタル画像がインターネットに公開され,それらを対象として絵画の色彩情報を分析できるようになっています.本講では,簡単なコンピュータ・ソフトウェアと若干の数式を使って,絵画作品の画面上にある色彩の特徴について計量的に分析する方法を解説します.絵画作品を視覚的に鑑賞するだけではなく,あたかも人体をCTスキャナで検査するように,絵画画像への「見かた」を変えて観察することで,絵画の中の色彩に関する新たな「気づき」を得ることを目指します.

<講義3-3> 15:00-16:30 岡 岩太郎(岡墨光堂)
『文化財修理と色彩』
 国宝や重要文化財に指定された絵画の修理にはいくつかの原則論があります.本講座では具体的な修理事例を紹介しながら,修理における原則論の重要性について考えます.また,絵画はあくまでも芸術であるため,原則論を遵守しながらも,修理によって芸術性や美的価値は維持あるいは回復されることが肝心です.修理の実務においてこの肝心の部分を遂行する時,様々な局面で色彩の問題が発生します.文化財修理の成否の鍵を握る色彩について検討してまいります.