(一社)日本色彩学会東海支部 2021年度第2回研究会 開催報告

  • 2021年11月30日

活動報告 東海支部 2021年度 第2回研究会
「石原式色覚検査とメラノプシン細胞の機能解明」
講師:辻村 誠一先生(名古屋市立大学)

原田昌幸(名古屋市立大学)
Masayuki Harada, Nagoya City University

 2021(令和3)年11月13日(土)13:00~14:30、東海支部の主催で、辻村誠一先生を招き、オンライン(ZOOM)で「石原式色覚検査とメラノプシン細胞の機能解明」と題した研究会を開催しました。司会は山縣亮介先生(名古屋学芸大)が担当しました。冒頭、東海支部長の石原久代先生(椙山女学園大)により、本研究会の紹介と他支部の会員を含めた多くの参加申込みにお礼が述べられました。
 ご講演では、まず、2000年頃に発見された光受容器、メラノプシン細胞(ipRGC/mRGC)の概略をご紹介いただきました。機能解明が徐々に進んでおり、メラノプシン細胞は見えには直接関係ない非撮像系回路(概日リズムの調整や瞳孔の対光反射など)において、重要な役割を担っていることがわかってきたとのことです。つまり、睡眠や感情、アラート、創造性などに関係しているようです。加えて、撮像系経路にも投射しているという報告があるとのことでした。
 ご講演の本題は、メラノプシン細胞の機能解明を進める上で鍵となる、健常者を被験者にした、メラノプシン細胞のみを刺激する実験手法のSilent-substitution法のご紹介と、そのSilent-substitution法を用いたメラノプシン細胞の明るさ・輝度知覚、コントラスト感度、色覚などへの寄与に関する研究のご紹介です。
 Silent-substitution法の解説では、特定の錐体細胞を欠損した人には混同色軌跡上の色は区別できないことを利用した石原式検査表の仕組みを、L、M、S錐体の反応との関係でご説明いただいたあと、健常者においても異なるスペクトラムであるが色の区別がつかない刺激のペア(メタマー対/色座標も輝度も同じになる)を図解いただき、L、M、S錐体への刺激量が等しく、メラノプシン細胞への刺激量が異なる光刺激がどのようなものかについてわかりやすく解説いただきました。

ご講演中の辻村先生

 その上で、メタマー対を用いたメラノプシン細胞の明るさ・輝度知覚、コントラスト感度、色覚などへの寄与に関するご研究について、それぞれ、実験に用いたメタマー対の刺激と実験手順を解説いただいたあと、実験結果を呈示いただきながら、どの程度の寄与があるのかを明快に詳説いただきました。ご紹介いただいた中には未発表の研究内容も含まれていました。

メタマー対の例

 最後に、本日の内容を整理いただき、今後の展望として、うつ病治療や建築照明の省エネ、脳機能の解明などへの応用について語られ、ご講演を締めくくられました。  講演後の質疑応答では、時間応答特性や感度・密度などの個人差、欠損している場合の影響、実験時の視野サイズなど、メラノプシン細胞の特性に関する質問が多く挙がりました。質疑応答は終了時間ぎりぎりまで続き、参加者の知的関心を大いに刺激した研究会となりました。ご講演いただい辻村先生に改めてお礼を申し上げます。なお、参加者は、他支部からの参加も多く、95名でした。