東海支部令和7年度研究会 開催報告

  • 2025年09月03日

東海支部
令和7年度 研究会「色に関する多様性とアイデンティティ形成
―感覚の個人差と学校制服の色彩から考える-」

鷲津 かの子(名古屋学芸大学)

令和7年8月5日(土)、椙山女学園大学星ヶ丘キャンパスにて、椙山女学園大学生活科学部准教授の内藤章江先生、静岡大学工学部助教の田代知範先生を講師にお招きし、「色に関する多様性とアイデンティティ形成―感覚の個人差と学校制服の色彩から考える-」
をテーマに研究会を行いました。当日は、56名の方にご参加いただきました。
1つ目の講演は田代先生に「等色関数の個人差と色彩の心理的影響について」とのタイトルで、現在取り組んでいらっしゃる研究内容をお話いただきました。1つ目は等色関数の個人差を扱った研究内容で、学生が制作した等色関数測定装置を使用して行われた実験結果をもとに、色を見分ける視細胞の感度特性が人によって異なることを説明していただきました。当日は学生の参加者も多かったのですが、色の知覚という感覚的に理解しにくい現象も大変分かりやすく説明していただきました。さらに、照明の明るさと色温度の組み合わせに対する印象を、いくつかの場面を想定して評価した実験結果もお示しいただき、どのような場面を想定するかによって快適さの評価が異なっていることを教えていただきました。
2つ目の講演は内藤先生に「学校制服のデザイン変遷と色彩に込められた想いとは-これからの学校制服について考える-」とのタイトルでお話いただきました。前半は学校制服の歴史について、社会的背景から色やデザインが次々と変化してきたことを教えていただきました。現代では90%以上がブレザー型になっており、多様性といわれる時代においても色のバリエーションは狭いという現状も知ることが出来ました。中学よりも高校はややバリエーションは多いとのことで、その背景には、高校は生徒が選択するという前提があり、より特色を打ち出したいという学校側の想いもある事が分かりました。さらに、海外との制服事情の比較や、新しい制服を導入した市の事例なども詳しくご紹介いただきました。
お二人の先生のお話を聞き、色彩が幅広い分野に関わっているという事を再認識する機会となりました。田代先生の色知覚に関する研究が進むことで、個人デバイスが当たり前の現代において、提供側が見せたいと思う色を個人が同じように感じるために、使用者に特化した色再現が可能となるかもしれません。また、内藤先生が関わっていらっしゃる制服では、新しい制服の導入の際に生徒達の投票も行われたというお話があり、制服との関わり方や制服に関する考え方はこれからも変化し続けるのだろうと感じました。
会場では活発な意見交換も行われ、大変有意義な研究会となりました。
 最後に、講師をご快諾くださいました内藤先生、田代先生に感謝申し上げます。