東海支部 第21回東海ヤングセミナー 開催報告
- 2026年03月09日
日本色彩学会東海支部
鈴木 敬明(静岡県工業技術研究所)
令和8年2月28日(土)、名古屋学芸大学 日進キャンパス メディア造形学部A棟MA206において、東海支部主催の第21回東海ヤングセミナーが開催され、支部会員と東海地域の学生を中心に16名が参加しました。口頭による研究発表は計7題、作品展示1テーマ。1題あたり15分程度(発表・質疑を含む)で進行し、天然染色から感性評価、CG表現、深層学習、実務応用型の色解析まで、分野横断の成果が披露されました。発表終了後には交流会(参加15名)も行われ、終始活発な意見交換が続きました。
名古屋学芸大学の山川日菜子さんは「羊毛布の着色抜染による色彩変化について」と題し、天然染料で染色・媒染した羊毛布にチタン/錫の着抜糊を適用して発色変化を測色。着抜処理により明度・彩度が向上する一方、染色・媒染の反復は明度低下を招くが色変化量は単純増ではなく、染料ごとの事前検証が重要であること、媒染に糊剤を併用することで部分的な処理が可能になり表現の幅が広がることを示しました。
続いて、椙山女学園大学の貝谷 憩さんは「ニッキ染色の色と香り」として、平安期の「香染」に関する先行知見を踏まえ、ニッキ(桂心)抽出液による絹布の重ね染めを検討。媒染とpHの違いが呈色に与える影響を分光反射率で示すとともに、HS-GC/MSで主要揮発成分を同定しました。揮発成分すなわち香りは1日で約40%放散するが7日後も残留が確認され、色と香りを併せ持つ染色物の可能性が示唆されました(本発表は優秀発表賞を受賞)。
椙山女学園大学の野尻和歌那さんは「化粧水の効果とボトルデザインの一致感に関する研究」を報告。女子大学生を対象とした予備調査・実験と本調査の解析から、材質・生産国・大きさといったボトル属性が「高級感」「信頼感」「特別感」やテクスチャー印象に影響すること、効果の想起はトーンよりも色相の影響が強いことを示し、印象構造が「美白効果因子」「エイジング因子」「肌荒れケア因子」の3因子で説明できることを明らかにしました。
名城大学の野本凜乃さんは「ダマスカス模様の外観評価における感性モデルの提案」として、包丁10本を対象に16の評価語で得た多変量データを因子分析。美的感性・幾何学性・金属性の3因子構造を見いだし、「好ましさ」への「メリハリ」の寄与や、「光沢」「シャープさ」「複雑さ」といった物理的要因に近い語の作用をグラフィカルモデリング等で関係付け、外観魅力の感性モデルを提示しました。
同じく名城大学の青山海斗さんは「ダマスカス模様の外観評価のためのCG表現」を報告。輝度計と積分球式測色計で計測した鋼材表面の光学特性を反映させて4種類の鋼材の質感を3DCGで再現。実物模様のスキャンを三徳包丁形状にマッピングして評価用CG試作を行い、質感の区別表現に目処をつけました。
名城大学の曽我宗平さんは「深層学習によるハンドボールゴールキーパーのコース予測と視覚情報の関係分析」を発表。ペナルティスロー局面の骨格遷移データを用いたLSTMモデルでコース予測を行い、入力点数の違いを比較。右腕情報を増やしたモデルが最も正答率が高く、人の予測特性に近い傾向を示すことを確認し、熟練GKの視線戦略研究とも整合する示唆を得ました。
掛川テックの杉山豊さんは「方向ベクトルに基づくRGB三角形の6分画色解析法とその応用(Hex6)」を紹介。画像をRGB三角形上の6セクタに分類するシンプルかつ高速・説明可能な手法で、河川濁度の定量評価、青色リボンの色変化による風速推定、短時間学習による異常検知の監視、化粧使用部位の色分布の定量化、触覚ピンアレイへの変換による視覚障害者支援など、多分野への応用可能性を具体例で示しました。
これとは別に、昨年度の東海ヤングセミナーでの研究発表内容を反映させた作品の展示として、名古屋学芸大学メディア造形学部ファッション造形学科の簗田綾乃さん・杉浦未唯さんが制作した「落花生の殻と薄皮を使用した染色による作品展示」を行いました。タンパク質繊維やナイロンでの濃色発色、酸性条件での染着性向上、ナイロンでの高い洗濯堅ろう度を踏まえたドレスとバッグを披露。薄皮で染めた生地のドレスは、素材循環と表現性の両立に注目が集まりました。
全発表終了後には役員投票により優秀発表賞が選出され、「ニッキ染色の色と香り」を発表した貝谷 憩さん(椙山女学園大学)が受賞。閉会後の交流会では、発表では語りきれなかった実験条件や制作プロセスの工夫、次の研究テーマの種について熱心な議論が交わされました。2時間半ほどのセミナーはあっという間に終了し、支部会員は若い感性と実践知に刺激を受け、登壇した学生・若手研究者にとっても新たな視点とネットワークを得る貴重な機会となりました。次回も多様な分野からの積極的なエントリーを期待します。


