(一社)日本色彩学会 2024年度(第7回)
『MIC(Most Impressive Color)2024』
〜2024年を彩った色〜

 第7回の2024年度も, 『MIC(Most Impressive Color)2024』〜2024 年を彩った色〜として,一年間を色彩という目線から振り返り,その年のイメージを共有するべく,2024年を代表する色を募集いたしました.日本色彩学会にて厳正に選考した結果,下記の色を『MIC 2024』〜2024 年を彩った色〜として決定させていただきました(図1).


「青」

 第1位の「青」はロサンゼルス・エンゼルスからロサンゼルス・ドジャースに移籍した大谷翔平選手の活躍がめざましく,メジャーリーグベースボール(MLB)史上初の50本塁打,50盗塁を達成し,日本国内でも連日,大々的に報じられ,国内外での経済効果に波及するほどドジャースのチームカラーを目にする機会が増えたことが最も多い選定理由でした.また,プロ野球日本シリーズ2024を制した横浜DeNAベイスターズのチームカラーもブルーであり,デザインが一新されたホームユニフォームの『YOKOHAMA STRIPE』とロゴ,ビジターユニフォームの地色など,コンセプトが明確に表現されたブルーの色使いにも着目していただきました.信頼感や知性を象徴する色としてだけでなく,国内外のスポーツ選手が活躍するチームの象徴として用いられた色として感動と勇気を与えてくれた,辛く悲しい出来事よりも感動の記憶とともに励まされ喜びを感じさせてくれた色などとしてブルーを選定いただきました.「青」の応募に関しては昨年までに多かった日本代表チームの活躍で支持を得ていたジャパンブルーからドジャーブルーという表現への変化が特徴的でした.また,昨年『来年の色』として日本流行色協会(JAFCA) によって選出された「モデレート・ブルー 」はファッションやインテリアのトレンドカラーとしても2024年に実際に街中でみかけることが多かっただけでなく,ノーベル平和賞授賞や国連国旗の地色の淡いブルーに関連して「冷静」と「知恵」のイメージを持つブルーを暗闇の中の光,「平和」を願う色としても応募いただきました.
 第2位と第3位は「赤」と「黄赤」でした.新たな時代を見据えた挑戦,行動,奮闘,インバウンドや人の動きの活発化,個人的な取り組みへの情熱やエネルギーなどは「赤」,猛暑や不安を感じさせるニュースが多い中での個々人の新しい取り組み,前を向いて輝く勇気,観光客の賑わい,災害現場における救助隊員の方々をはじめとする人が支えあうことが多い様子などは「黄赤」として応募いただきました.
 また,フランス・パリを中心に開催されたパリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会に関しては日本の公式ウェアのチームジャパンを象徴する「レッド」よりも,開催国フランスをイメージさせる青,白,赤の国旗のトリコロールカラーに着目いただきました.さらに,MICの応募期間と重なった第50回衆議院議員総選挙や兵庫県知事選挙2024で連日報道された「青」や「オレンジ」,アメリカ大統領選挙2024における政党支持傾向を示す「赤」と「青」なども選定理由に挙がりました.印象的な出来事の情勢や重複を基準にした選出,二つ以上の色を配色や混色結果の基本色名や系統色名とした表現,個性表現の手段として生成AI(人工知能)を用いた出力など,多様な応募をいただきました.
 第4位〜第6位は大別して「紫」,「緑」,「灰色」が挙げられました.「紫」は2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』の主人公の紫式部関連としてでだけでなく,オリンピック競技場で初めて採用された陸上トラックの「紫」,広域的に過去最多で発表された紫色の熱中症警戒アラート,「赤」と「青」を選定候補に加えた方の中には,二つの色の混色結果の色名としても応募いただきました.サスティナビリティへの取り組みに関しては,エネルギー政策や環境施策の最適化に生成AI技術が貢献したことに着目した「緑」が挙げられました.実際彩りを感じられなかったという応募の中には,「黒」だけではなく,明るい希望を未来に持ち続けたい想いから「グレー」,希望の光を黄色とした「グレイッシュイエロー」や「透明色」など,多彩な表現で応募いただきました.
 以上のように,本年は色を深く連想できるような印象的な出来事が多く,コロナ禍明けの変化を個々人が異なる色で表現したことが応募結果の大きな特徴でした.10件以下の応募色が47%と約半数となり,情報収集の仕方も選択肢が増え,生活変化に対する個々人の価値観の多様性が応募色の選定に如実に反映されました.
 このように年々増加する応募色や応募理由の多様性を反映させるために本年はMICのマジョリティ決定色に加え,ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みとして,全ての応募者を対象として選考理由を考慮し,特別賞の選考も行いました.MIC選考委員会の厳正なる投票により,多角的な観点で今年を彩った色を考察いただいた「紫」の応募者,AIの急速な普及に対応し,パリ五輪の赤,トランプ大統領の活動のイメージから二つの国旗の「赤」に着目し,実際に生成AI技術を応募色に反映させた「赤(#b22234)」の応募者,本年5月に世界各国で観察された稀有なオーロラ現象に関連して,一言で表現できない色を端的に表現した「オーロラ」の応募者,以上の3名の方々も特別賞としてMIC 2024の授賞対象者とさせていただきました.
 2025年3月20日(木・祝)午後にオンライン開催予定のICD(International Colour Day)2025にて授賞式を執り行います.年間を通じた振り返りの色として「青(ブルー)」の応募者の選考理由より決定した当選者および特別賞の授賞対象者,応募時に応募者優待を希望された皆様には,ICD開催前に改めてご連絡をさせていただきます.本年度も日本色彩学会員の皆様,色彩に携わる幅広い方々のご協力を賜り,多数の参加応募をいただきましたこと,心より感謝申し上げます.次年度MIC 2025も何卒ご支援を賜りますよう宜しくお願いいたします.


2024年12月29日
(MIC選考委員会一同)




日本色彩学会ホームページへ URL:
Copyright 1998-2024 The Color Science Association of Japan. All Rights Reserved.