くらしの色彩研究会 2020年度講習会「織り手の個性を映しだすアート“さおり織” 体験」 報告

  • くらしの色彩研究会
  • 2020年08月15日

くらしの色彩研究会 2020年度講習会
「織り手の個性を映しだすアート“さおり織” 体験」 報告

場所: MAKIHO洋裁教室(名古屋市)
日時: 2020年7〜8月 1回2時間
参加: のべ10名

【はじめに】
 新型コロナウィルス感染拡大の煽りで、大勢を集客する恒例の講習会は実施しにくい状況のため、くらしの色彩研究会では知恵を絞り、「分散訪問型の講習会」という形を試みた。今年7月に名古屋市名東区にオープンしたMAKIHO洋裁教室には、ログハウス調の温もりのある空間に、色とりどりの糸たちと、4つの織り機が置かれている。黙々と手織りに没頭すると、雑念が消えて気分も浄化されて、なんとも爽快。そして、計算されたデザインの機械織とは異なり、その日の気分で自由に素材や色を選んで、ルールにとらわれずに赴くままに織り重ねる楽しさ。2時間を終えると、予定調和ではない偶然が紡ぎ出す面白さにも出会える。織りあがった作品には織り手の個性が現れているような気がして、それも面白みの一つだった。(川澄未来子)

【参加者より一言】
LCの講習会にMAKIHO洋裁教室の「織体験」を提案した。「織」は簡単な操作を覚えたら誰にでもすぐに織れるところが素晴らしい。色とりどりの糸を前にすると気分が高揚し、織りあがって布になると何を作ろうかと思いが巡る。(疋田千枝)

楽しみにしていた“さおり織”体験。アトリエには様々な色やテクスチャの糸が美しく並び、それらの糸を選ぶだけでもワクワクする。好きな色の糸たちを好きなように織り出来上がった作品は、デコボコでもそれがまた味わいといえる私らしい織物になった。(多田真奈美)

教室の色とりどりの糸が並んだ大きな棚に目が奪われた。コロナ禍においてこんなに色の洪水を眼にしたのも久しぶりのことで、それだけで気分が高揚した。気になる色の糸を選び、迷いながらも織っていく。出来上がった織物はその時の心の色模様。自分と向き合える貴重な時間でもあった。(富本いちこ)

テキスタイルデザイナーとしてウン十年、工場に色柄指示を出しては来たが、実際に自分で機を織った事は無かった為、イメージのままに瞬時に具現化出来る手織りの醍醐味を体験でき新鮮であった。世界に一つだけのストールを完成し、大満足である。(岡田郁代)

 棚に並べられた色とりどりの織り糸から、これはと思った糸を選ぶ。織ってみると予想とは違っていたり、一本織り込んだだけで思わぬ効果が得られたりしてとても面白かった。次回は考えすぎないで気の赴くままに織ってみたいと思った。(菅 育子)

好きな色の糸を好きに選んで思い通りに布を作れるという嬉しさと、織り作業の心地よさに夢中になった。そこに、布の仕上がりは思い通りにはならないというのが加わり、思わず、「もう一回やりたい!」となる体験教室であった。(高松 操)

短い夏をまだもう少し楽しんでいたい思いから、エメラルドグリーンのキラキラ光る海辺の色と灼熱の夏を色彩で表現してみた。織りあがった布がローラーに巻き込まれるので左右対称にするのが難しかったが、縦糸の黒が全体を引き締めてくれ、何とかまとまったようだ。(住吉佳子)

好きな素材と色糸で感性の赴くままに織っていく。ふんわりとしたピンク糸にラメ糸を加えて柔らかさと光沢を表現してみた。テーマはフォカマイユ配色?織り手の個性が布に現れ、完成後の品評会と写真撮影も楽しいひと時だった。(ながなわ久子)

【教室主宰より一言】
 MAKIHO洋裁教室では、7月OPEN以来、延べ30人の方が織りを体験された。
LCの参加者は趣くまま糸を選ばれ、すぐに織りに没頭。さっきまで棚にあった糸が生きもののように変身。それぞれ感性豊かな素敵な織り上がりとなり、和やかにお互いの織りを前に交歓。これも織りの醍醐味である。
 織りは見本も失敗もルールもない自由な世界である。感性を働かせる機会が少なくなった今、その自由さを前に糸を選ぶことさえ躊躇される方もおられる。はじめて触れる織り機を前に表情も硬く、恐る恐るスタート。しかしパタンパタンと横糸を重ねるうちに表情も明るく一変。無心で織り終える頃にはその方の心がいきいきと映し出される出来栄えとなっている。
このように埋もれていた感性が引き出される瞬間に立ち会えることに感動を覚える。そして「ああ 自分を織っているのだ 」と気づかされる。
これからの私の課題は、織りを体験として終わらせるのではなく、bagやお洋服、敷物になど物作りに繋げていき、洋裁とも絡めながら、生活に根ざした教室にしていくことである。(MAKIHO洋裁教室主宰 松澤 真紀)