景色通信Vol.33『千里の記憶』

  • 環境色彩研究会
  • 2011年12月24日

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景色通信Vol.33
『千里の記憶』

風景は時の流れとともに変わりゆくものと解っていても、41年の時間の経過とは、このようなものかと感慨深い。小学生だった私は家族と一緒に、ここ大阪千里で開催された世界の祭典「EXPO’70」を見物した。数多くのパビリオンに入場するために真夏の炎天下、長蛇の列をつくってひたすら待ちつづけた。涼しい夜風の中で見た照明に浮かび上がる魅力的な建物たち。万博会場で日本の経済の勢いと技術力のものすごさに、両目を輝かせて見入ったことを、今でもはっきりと思い出すことができる。
人類の進歩と調和というテーマのもと、人工的につくられた空間に興奮した。子供たちにとっては、おとぎ話の中を旅しているような、夢見心地になれる場所だったのかもしれない。月の石を一目見ておこう、と米国パビリオンに入場するため黙って待ち続ける日本人は、本当に辛抱強いと思った。現在では、そのあたりは緑深い森林となって、市民の憩いの公園に姿を変えている。木々の葉がやさしく揺れるあの時の道を歩いてみた。ふり仰げば、ギラギラ輝く太陽と大空を流れてゆく雲は、今も変わらずに昔のままだった。(加藤進久)


芸術は爆発するほどのパワー!未だに健在


滝の落ちるこの会場を歩いた記憶がよみがえる


秋に訪れると木々の彩りに目を奪われてしまう


現在は緑の色濃いアメリカ館の在ったあたり