景色通信Vol.59『ニースの街並み』
- 環境色彩研究会
- 2015年04月22日
景色通信Vol.59
『ニースの街並み』
2015年の2月末から3月の初めまで、長年行ってみたかった南フランスへ行きました。印象派の画家たちを魅了した風景と、その地に根ざした文化に触れてみたいというのが旅行への参加意識でしたが、日本の住宅の好まれるテイストの一つである、「南欧風」の元祖である街並みを色彩の観点から見る事も目的の一つでした。一カ所ごとの滞在時間が限られていたことや、両手が塞がることで治安上のリスクが高まる事を避けることから、測色をすることができませんでしたが、街の色合いを感じて目に焼き付けてきました。幾つか巡った街の中で、ニースの建築物の屋根色の多くはYR系(黄赤系—橙系—オレンジ系)でした。YR系の褪せた色合いは、近い色相でまとまりながら多少の明度差があり、味わい深い印象でした。外壁色は、主にR系(赤系)〜YR系(黄赤系、ベージュも含まれる)〜Y系(黄色系、アイボリー、ベージュも含まれる)が多く見られました。少量のN系(ニュートラル系—白〜グレー〜黒)のものもありました。主な屋根色と外壁色がある範囲の色相にまとまって来た背景には、古くから使われて来た素材の色の影響などのさまざまな要因があるのだと思いますが、これらのR系、YR系、Y系の色彩は、海の色の象徴色であるB系(青系)〜PB系(青紫系)とは反対色の関係で、お互いに引き立て合う配色になり、風景の印象をより美しく感じさせました。(大倉素子)
地中海に面したニースに降り注ぐ光と屋根色は魅力的。
目をこらして眺めると左は建築中のビルの完成シート。