景色通信Vol.64『最先端は伝統にあり、退蔵院の襖絵』
- 環境色彩研究会
- 2017年03月29日
景色通信Vol. 64
『最先端は伝統にあり、退蔵院の襖絵』
京都・退蔵院は、絵師が住込みで襖絵の修行をしている。修行のイメージとは裏腹に、絵師は若き女性である。副住職、松山大耕氏による文化継承や絵師を育むことなどについて伺い、お抱え絵師、村林由貴氏の案内で素描と襖絵を拝見した。
村林氏による襖絵は、墨で描かれるモノトーンの作品である。しかしながら鯉には「艶」があり、流水は光を感じさせる。黒にも幅があるが、生成りの襖紙にこっくりとした赤みの黒で描かれる鯉からは、濁流にあらがう生命がほとばしる。
もう一枚は、仏著名デザイナー・ジャンポール・ゴルチェ氏による作品である。こちらも鯉の滝登りを題材としており、北斎を思わせる藍に橙を配した「鯉」が粋である。
色のアプローチこそ異なるものの、いずれも日本の伝統モチーフを堪能させる斬新さで、今日の素晴らしい作品に昇華させている。(網村眞弓)
一年を通して美しい彩りの余香苑。「そうだ、京都行こう」
妙心寺山内壽聖院の襖絵は濁流の中に鯉の生命感がみなぎる
住み込みの絵師により披露された襖絵の習作
日本画のモチーフは海外でも評判になることが多い