[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.13
『パリで探したルージュ』
晩秋のパリを訪れた。山手線およそ一周分の環状道路の内側に入ると、都市計画や保存規制で統一されたゾーンが広がる。美と機能を追求する魅惑の街パリ。その中心部の建物は、クリーム色か白の外壁で高さも一定にするというルールが今でも健在だ。伝統ばかりを継承するだけでなく、建物の中はモダンなインテリアを施すなど工夫されてデザイン性も高い。
街をのんびり歩いて感じたのが、人々の着こなしが黒っぽいことだ。パリの街中にはルージュ(赤色)が少ないと気づいた。もちろん信号や標識、メトロ構内やバス停、広告の中で使用されるモデル写真に赤色を見つけることができた。赤い車もごくまれに見かける程度だ。広場で発見した少女が着る赤い服は、何とも微笑ましかった。
夕闇がせまる頃、色とりどりのネオンが控えめに灯りはじめる。街の夜間照明は歩行者の安全確保や名所建造物のライトアップだけでなく、環境への配慮や時間的ルールのほかに、場所ごとの演出デザインが必要だと感じた。
その夜、行き着いたのがモンマルトルの丘の麓「赤い風車:ムーラン・ルージュ」。まるでロートレックの絵の中にいるような魅惑的な空間と質の高いショー。夢の世界で見た赤色は、きっと忘れることはないだろう。(加藤進久)