[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.15
『倉吉〜赤瓦と白壁と黄色い舗装』
春、桜には少し早い時季に倉吉を訪れた。町のなかを流れる玉川という小川沿いに江戸、明治期に建てられた白壁土蔵群が残され、観光拠点になっている。土蔵は表通りの店鋪の細長い敷地で、一番奥に位置する川に沿って建てられたものが、まとまって残されている。石州瓦の赤瓦に白い漆喰壁と黒い焼き杉の壁の基礎には、しっかりとした石垣が組まれ、澄んだ水には鯉が泳いでいるという図式で保存されていて、土蔵は観光客のために利用されているものもある。
一帯の区域が保存的な方針で整備されているようで、表通りの一部は黄色い舗装工事が完成したばかりであったが、黄色酸化鉄の顔料色そのままの鮮やかな黄色になっていて違和感を覚えた。やがて汚れと酸化によって、土色に変わって行くだろうが、それでも人工的な色の感じは残るであろう。地方の色を大切にするのなら、中国山地の土や、それが海に流れてできた海岸の砂の色や質感を持たせる路面舗装の技術が開発されると、まだ舗装がなかった時代の景観がよみがえり、地方色が出て面白いと思う。(永田泰弘)