[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.34
『市民マラソンと景観』
全行程を42.195kmの旅にたとえさせていただくとしよう。ここ奈良大会のように、スタートの数日前にマラソンの開催地に入る人たちも多いだろう。大会のコースは、風光明媚な地域ばかりを疾走するわけではない。開催期間中の自治体や沿道で応援する市民たちは、来街ランナーを迎えるため美意識が高くなるのが普通だ。トップランナーであれば、レースに勝つことに集中するのは当然だが、完走を目的にマイペースで走るランナーも数多く参加する。彼らは給水所の人々のホスピタリティーを感じながら、そのまちの景観も楽しみながら走り抜けていくのだ。テレビ中継があれば、離れたお茶の間でレース観戦しながら、まちの景観を堪能することもできるだろう。
もし、ゆっくりでも調子よく走りきることができるのなら、是非マラソン大会に参加をして、普段では見られない車道から、まちの景色を見ながら走ることをお勧めしたい。きっと新たな発見があることだろう。
外国を旅行中に朝の散歩をしていると、ジョギングをする人と次々にすれ違うことが多い。人間は歩き動くことで健康を維持することができるはずだ。気持ちのよい景色の中で思い思いのコースを描き、心身のリズムと呼吸を整えながら第一歩を踏み出す。そして自分のペースで走り続けることは、何ものにも代えがたい心地のよい時間なのだ。(加藤進久)
心身健全をキープすることは意外とむずかしい
マラソンの季節は紅葉のシーズンでもある
遠方から駆けつける来街ランナーも多い
景色を新鮮に感じながら目抜き通りを走り抜ける
[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.33
『千里の記憶』
風景は時の流れとともに変わりゆくものと解っていても、41年の時間の経過とは、このようなものかと感慨深い。小学生だった私は家族と一緒に、ここ大阪千里で開催された世界の祭典「EXPO’70」を見物した。数多くのパビリオンに入場するために真夏の炎天下、長蛇の列をつくってひたすら待ちつづけた。涼しい夜風の中で見た照明に浮かび上がる魅力的な建物たち。万博会場で日本の経済の勢いと技術力のものすごさに、両目を輝かせて見入ったことを、今でもはっきりと思い出すことができる。
人類の進歩と調和というテーマのもと、人工的につくられた空間に興奮した。子供たちにとっては、おとぎ話の中を旅しているような、夢見心地になれる場所だったのかもしれない。月の石を一目見ておこう、と米国パビリオンに入場するため黙って待ち続ける日本人は、本当に辛抱強いと思った。現在では、そのあたりは緑深い森林となって、市民の憩いの公園に姿を変えている。木々の葉がやさしく揺れるあの時の道を歩いてみた。ふり仰げば、ギラギラ輝く太陽と大空を流れてゆく雲は、今も変わらずに昔のままだった。(加藤進久)
芸術は爆発するほどのパワー!未だに健在
滝の落ちるこの会場を歩いた記憶がよみがえる
秋に訪れると木々の彩りに目を奪われてしまう
現在は緑の色濃いアメリカ館の在ったあたり