景色通信Vol.9『東京の顔~新しさと旧さの間で』

  • 環境色彩研究会
  • 2007年10月04日

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景色通信Vol.9
『東京の顔~新しさと旧さの間で』

丸の内近辺を逍遥した。それにしても大勢の人また人… 街の印象は訪れる時間によって異なる。その建物の佇まいは、古典的で気品さえ感じられる。ビル空間内を移動しながら、デザインやアートとともにモノの価値を再認識させられる時間だった。短い滞留でも気に入った空間やショップを発見できる喜びがある。特別な目的を持たずに回遊して気分転換をするのは、小旅行の感覚に似ている。感性を忘れていた大人の方も、気持ちが上向けば買い物モードがONになるかもしれない。どこか異国的とか懐かしい時間旅行ができるとか、そんな居心地の空間へビルも変化しているようだ。
2012年には復原された東京駅の駅舎も完成する予定だ。もとのまま新しくつくるというデザイン思想は、これまで多様化してきた街並みの中で、建物同士がひとつの固まりとなる在りかたや、本物の街の価値を認識していく必要を提示してくれる。ここ東京駅界隈は、建物ごとに香るさりげない感性で惹き付けて、街全体で魅了する空間へと進化を遂げ、東京の玄関口としての風格を保ちながら、訪れる人を心地よくもてなしてくれるゾーンへ変貌していくのかもしれない。(加藤進久)