景色通信Vol.11『吹屋で見た原風景』

  • 環境色彩研究会
  • 2008年08月21日

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景色通信Vol.11
『吹屋で見た原風景』

8月15日、岡山県成羽町吹屋を訪れました。吹屋は江戸時代からの銅山で、幕末から明治にかけて、弁柄製造の町として栄えた所です。こじんまりとした通りですが重要伝統的建造物群保存地区になっています。狭い通りをはさんで茶色の石州瓦を葺いた切妻や平入りの二階建ての商家や民家が軒を接して立ち並び、壁は白壁の他に紅柄を混ぜた淡赤色の塗り壁、格子にはベンガラが塗られるなど紅殻の町らしい景観です。石州瓦も戦後の色が均一で彩度の高い赤瓦ではなく、彩度が低く色のばらつきが多い昔の石州瓦が使われていて、緑との調和が抜群の良い色合いです。
ちょうど、お盆にあたり、通りの家々の前には手作りの灯籠が置かれ街路灯も無い通りに印象的な景観を演出していました。新しくはじまった催しらしく個々の灯籠は切り込みを入れた竹筒や上部を切り落としたペットボトルにベンガラの絵具で思いおもいの模様を描いた和紙を巻き付けただけの筒に蝋燭が一本灯っているだけの安上がりのものでしたが、闇が稚拙さを隠し、はっとした効果を出していました。闇の濃い通りに点々と並ぶあかりの列は、環境色彩の原点とも言える心を打つ演出だと思いました。(永田泰弘)


弁柄製造の町として栄えた吹屋の町並み

緑と良く調和している石州瓦の屋根

お盆の時期、家々の前に置かれる手作り灯籠