景色通信Vol.38『東寺の面影』

  • 環境色彩研究会
  • 2012年02月20日

[PDF版はここをクリックしてください]

景色通信Vol.38
『東寺の面影』

京都駅を走り出す下り新幹線から見える五重塔。日本一の高さを誇る木造の仏塔がある東寺を参拝した。これまで東京を出発して京都を訪れるたび、中央口から四条河原町方面を意識することが多かった。反対側の八条口方面にも名所はあるのだろうか。観光ガイドブックで紹介されることは少ないかもしれないが、1200年前の平安京がつくられた時代の上洛ルートを想像してみよう。南を流れる鴨川に設けられた鳥羽港、そこから人々や陸揚げされた物資のほとんどは羅城門をくぐって都を目指した。当時はこちらが玄関口であり、西国や海外へ向かう出発地でもあったのだ。時の流れとともに地形や水系はだんだんと変化する。通りを行き交う人や商店の多さ、交通環境などで景観も変わりゆく。マイペースで旅をする歩行者視点と、便利で時間効率のよい自動車からの視点で考えるまち並景観が、共存していくためにはどうすればよいか。まちの開発は、鉄道や幹線道路が分水嶺になることが多い。昔からその地で営まれていた生活や文化史を、もっと後世に伝える方法を考えていかなければいけない。現代の情報通信の技術をもってすれば難しいことではないだろう。経済性や安全性とともに、日本人の感性を共有することから始めたい。(加藤進久)


京都駅近くを走る車窓から眺めることができる五重塔


僧の修行の場である食堂が見える


聖地と俗世界との境となる荘厳な南大門


外堀には鷺と亀が仲良く共存している