景色通信Vol.41『雨に映える極彩の舞』

  • 環境色彩研究会
  • 2012年06月06日

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景色通信Vol.41
『雨に映える極彩の舞』

武州平井の妙見宮は関東最古の西暦685年に開創された。別名を妙見菩薩とも呼ばれ、星の神様・運命の神様として親しまれている。その後、韓国より材料ばかりか職人まで呼び寄せて再建されたという珍しい寺だ。環境色彩研究会では昨夏の視察につづき、東京都西多摩郡日の出町で毎年5月3日に催される妙見宮例大祭―“妙見まつり”見物に訪れた。
まつりでは、山頂と舞台の二か所で並行して行事が行われる。私たちが到着した時には、ちょうど山頂での開運祈願・祈祷護摩神事の時刻で、珍しく古いお札のお焚き上げが行われていた。妙見宮の本尊は七星殿と称され、天井には常に北の空の中心にある北極星を、運命をつかさどる妙見様として囲むかたちで、中央には星曼荼羅と四天王、東西には三十六禽と十二天といった三部構成の星曼荼羅が描かれている。何と言っても目を見張るのは、その極彩色の色使いと顔料の艶みのない質感である。なぜか鮮やかながらも落ち着きをもち、親しみを感じさせる。舞台では、これもまた五色鮮やかな衣装をまとった舞踊が、韓国から来た伝統芸術団により繰り広げられ、静と動の見事な組み合わせによる舞を堪能することができた。
午前中に予定していた奥多摩の桧原自然探索は記録的豪雨のため、あきる野市街散策に変更した。マンホールの装飾に地元らしさが溢れ、意匠も中央の梅の花うぐいす(?)から放射状に梅の木が生えていて力強い。また、秋川街道始点近くの住吉神社の参拝では、何やら手にお道具を持つキツネの出迎えがあって印象的だった。妙見宮訪問の帰路立ち寄った禅寺の廣徳寺では雨も止み、門をくぐると一面浅い湿地が出現。静けさの中、自然と共生する生のままの色と質感、萌ゆる緑など、日本の色の美しさが醸し出す凛と澄んだ様子に見とれて、一同懇親の会を持って散会した。(網村眞弓)


五色の鮮やかな衣装の韓国伝統芸術団の舞


山頂の妙見宮での古いお札のお炊き上げ


住吉神社のキツネが持つこの道具は?