2016年2月27日(土) 2015年度研究発表会ならびに研究会総会開催のお知らせ

  • 画像色彩研究会
  • 2016年02月07日

《PDFファイルによるご案内はこちら》

日本色彩学会 画像色彩研究会
2015年度研究発表会ならびに研究会総会開催のお知らせ

主査 鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)

下記のとおり研究発表会ならびに研究会総会を開催します。ぜひご参加ください。

日時:2016年2月27日(土)
研究発表会:13:00~16:10 研究会総会:16:20~17:00
終了後懇親会を催します(17:30~19:30)
場所:国立新美術館3階研修室A(東京都港区六本木7-22-2)
会費:資料代として1,000円をいただきます.
参加申し込み:下記問合せ先までお願いいたします。懇親会参加の有無も合わせてお
知らせください。
問合せ先:画像色彩研究会 担当幹事 望月宏祐
Email:sigci-event@sigci.sakura.ne.jp FAX: 0268-39-0002(長野大学望月宏祐宛)

●一般セッション(13:00~13:50)
座長:鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)

1) 絵画画像の色彩変化の離散的構造について
室屋泰三(国立新美術館)
著者はこれまでWavelet変換や独自の完全正規直交関数系を用いて、絵画画像の色彩
変化について分析を試みてきた。しかしながら、画面上でスケールが異なる色変化、
すなわち画面上での意味や役割が異なる色変化に対して、同一のモデル(基底関数)
を適用すること、数学的な理由により色変化の計量に重み付けを行うこと、鑑賞者は
作品を必ずしも階層的には見ないことなど、数学的モデルを用いることが分析結果を
作品の色変化の直感的理解から乖離させてしまうことがある。本発表では、これらの
反省点から、非階層的で離散的な色変化分析モデルの構築を試行する。今回は簡単の
ため画像を矩形領域に分割し、それぞれに対して色変化に応じた特徴ベクトルを求
め、特徴ベクトルにより矩形領域を分類し、また、画面上での同一色変化の位置や相
互距離等の構造について考察してみる。

2)「心象の色彩表現」アーカイブの方法と活用について
~配色と構成および質感の傾向分類報告~
粟野由美(東京造形大学)
1950年代~2000年に日本の美術系大学での色彩演習科目において課された「心象の色
彩表現」課題に対する学生の回答(絵画作品)のうち、現存する概ね1500点につい
て、現在、二次元の撮影を行い、データベース化に取り組んでいる。これらは芸術的
意志に導かれた由来の芸術作品とは言えないものの、表現技法の実験場として豊かな
創造性が認められる。一枚の単体として、あるいは1500枚の集合体として、色彩と構
成および素材への認識を深める実験場としての有意義性、色彩心理効果、情報流通に
よる共通感覚の形成という社会文化の点、そして芸術家育成の造形基礎教育の効果を
測るという点に照らして、興味深い試料である
今回は、デジタル撮影が済んだ305件を対象に、心象の色彩・構成・質感への代替に
どのような傾向がみられるかを分類して報告する。表面を成す配色・構成・質感(触
感)のうち、質感の一要素である凹凸は厳密には測定していない。「絵画」を平面と
して扱うか、立体として扱うべきか、デジタルアーカイビングにおける凹凸情報採取
の必要性についても考察する。あわせて、この試料の活用の可能性について見解を述
べる。

●テーマセッション「色彩と人の技」(14:00~15:15)
座長:室屋泰三(国立新美術館)

3) ファンデーションを塗布した肌と素肌の分光反射特性の計測
兼子亜弓,洪 昇完,田中法博,望月宏祐(長野大学企業情報学部)
本稿では,ファンデーションを塗布した肌と素肌の分光的な反射特性のそれぞれを定
量計測し,その違いを調べる.まず,人の顔部分の反射特性を計測できる計測系を試
作し,入射角度を変化させながら分光放射輝度の変化を計測できるようにした.この
計測系を用いて同一人物の顔部分に対してファンデーションを塗布した肌と素肌の両
方を計測し,幾何的な変化に対して分光放射輝度がどのように変化するかを調べた.
この結果,ファンデーションを塗布することで肌の反射率が高くなるだけでなく,
ファンデーションを塗布した肌は素肌と比較して,入射角度が大きくなった場合でも
分光放射輝度の低下が少なくなることが確認された.

4) 漆器の光反射特性の画像計測に関する一手法
足立優奈,望月宏祐,田中法博(長野大学企業情報学部),
李元貞(畿央大学健康科学部)
本稿では,画像計測に基づいて漆器の光反射特性を推定する手法を提案する.本研究
では棗の形状を対象に漆の反射特性を画像計測する手法を示す.反射特性計測には,
観測方向,法線方向,照明方向の幾何的な関係を知る必要がある.このため,計測物
体である棗の円筒に近い部分を円筒形状と仮定して画像情報のみから推定する手法を
提案する.この方法を用いて,計測は漆のほかにウレタン,カシューなど他の材質
や,刷塗りや吹き付けなど塗り方が異なるものをそれぞれ計測し,光反射特性の違い
を検証した.また,計測値はTorrance-sparrowモデルをベースとした光反射モデルで
フィッティングし,そのときのモデルパラメータを推定した.

5) 万年筆資料の展開図画像の画質改善のためのひとつの工夫
鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)
国立歴史民俗博物館(以下歴博)が平成28年春に開催する企画展示「万年筆の生活
誌」のために,歴博が所蔵する蒔絵万年筆資料の展開図を作成した.スリットカメラ
の原理に基づき,万年筆を一定角度(5°)で回転して撮影したマルチアングル画像
から展開図を合成したが,万年筆の太さは均一でないので画像の幅が必ずしも回転角
に比例せず,単純に一定の幅で切り出した画像を合成したのでは重複や欠損を生じ
る.そこで簡単な画像処理によって万年筆の太さを求め,幅が回転角に一致する補正
画像を生成したところ,重複や欠損のない画像を得ることができた.本発表では,ク
リップのようにまわりから著しく飛び出している部分があると,画像から正確に半径
を求められない部位(たとえばクリップの左右部分)が生じ,画像が乱れる問題を解
決するための工夫について述べる.

●総合討論(15:15~15:45)
●2015年度アートツアー報告(15:50~16:10) 報告者:粟野由美(東京造形大学)
●研究会総会(16:20~17:00)

以上.