シンポジウム《光,色そして形》開催のお知らせ(確定版)

  • 2009年10月09日

かねてより「色と形の講演会」としてご案内しておりました催しの
内容が確定いたしましたのでお知らせいたします. 鈴木恒男(関東支部長)

PDF版チラシはこちらからどうぞ.

シンポジウム《光,色そして形》

○シンポジウム概要
わたしたちのまわりには光と色が満ち溢れています.
光は色を与え,色は形を作り,その形から私たちはいろいろなことを感じ,思い,また認識します.
色と形は表裏一体の関係にありますが,その関係は必ずしも対称ではありません.例えば,形は色が存在する範囲ですが,時として人は色の存在範囲を超えて,形を認識します.そのような不思議な関係は多様な絵画表現や錯視図形の中に見ることができます.
形は心で認識されているのです.
本シンポジウムでは国立新美術館で開催中の「光 松本陽子/野口里佳」展の出品作家である松本陽子氏を迎えてアーティスト,心理学,美学などのさまざまな視点から,「色」と「形」の,当たり前のようで,実は当たり前ではない関係について新しい視野を得ることを目指します.

○主催 日本色彩学会,国立新美術館

○日時 2009年10月9日(金) 17:00 ~ 19:10
※当日,国立新美術館は夜間開館(20:00まで「光 松本陽子/野口里佳」展(★)を観覧可能)

○会場 国立新美術館 講堂(3階)(東京都港区六本木7-22-2,東京メトロ千代田線乃木坂駅6出口)

○参加費 無料

○事前申込 不要

○プログラム
(1)講演「私的光景―ピンクと緑を巡って」
松本陽子(「光 松本陽子/野口里佳」展(★)出品作家)
(25分)
(2)講演「光、色そして形か、光、形そして色か: 色と形の心理学」
鈴木恒男(慶應義塾大学,日本色彩学会)
(25分)
(休憩 10分)
(3)講演「マチスは色彩で笑う」
小町谷朝生(文星芸術大学,日本色彩学会)
(25分)
(4)講演「絵画表面と色彩 ― 近代絵画の特性」
中島恵(慶應義塾大学)
(25分)
(5)講演者によるディスカッション
(20分)

○講演者プロフィール
・松本陽子
1936 年東京生まれ。東京藝術大学美術学部油画科卒業。1960 年頃より抽象絵画の制作を始める。1967 年、滞在中のニューヨークで初めてアクリリック(アクリル絵具)に出会い、帰国後の1970 年代から、本格的な試行を開始。1980 年代から1990 年代にかけて、ピンクを主調色とした独自の抽象絵画のスタイルを完成させる。光に満ちた密雲のような画面は、アクリリックとコットン・カンヴァスの特性を生かしたもので、高い評価を得た。近年は油彩画を再び取り上げ、特に2005 年から始められた緑の絵画は、瑞々しい空間性により注目を集めた。主な展覧会に、国立国際美術館での個展(1991年)、神奈川県立近代美術館鎌倉での二人展(2005年)などがある。東京在住。

・鈴木恒男
1950年東京生まれ。1977年慶應義塾大学大学院社会学研究科心理学専攻修士課程修了、2004年千葉大学自然科学研究科 博士(学術)取得。資生堂株式会社横浜研究所、富士写真フイルム株式会社足柄研究所を経て、慶應義塾大学法学部教授。心理学を担当。研究分野は写真、印刷の色再現の研究、白さの知覚に関する研究、肌色の好ましさに関する研究を主に行い、現在は日本色彩学会関東支部支部長を務める。著書はカラーサイエンス(共著 朝倉書店)、色彩用語辞典(編集委員長 東京大学出版会)等がある。

・小町谷朝生
1933年長野県伊那谷木曽駒ヶ岳のふもとの赤穂町(現駒ヶ根市)に生まれる、昭和でいうと8年5月13日朝5時に生まれた由。それで朝生まれと単純。ちなみにこの生年月日は8+5=13という初歩の足し算で表されて単純。谷間といっても日当たり良好で常に心中笑いあり。今回の演題もその範囲のもの。東京芸術大学で漆芸を習うも、ふと色彩に転向。理由は本人にも不明で、色彩感覚に長所ありとはその後の発見である。一心不乱が性質らしく、漆の製作品でもそれで勝手をしたが、色彩研究に転じた後も自尊独立の勝手三昧であることはご覧の通り。文星芸術大学教授、東京芸術大学名誉教授。

・中島恵
慶應義塾大学文学部非常勤講師 2001年慶応義塾大学文学研究科哲学専攻美学美術史学分野前期博士課程修了。2003-4年慶應義塾派遣交換留学生(パリ第一大学)。2006年パリ第十大学高等研究免状(D.E.A)課程修了。2006年慶応義塾大学文学研究科美学美術史学専攻後期博士課程単位取得満期退学。

(★)「光 松本陽子/野口里佳」展について
国立新美術館では「光」というタイトルのもとに、現代日本を代表する二人のアーティスト、松本陽子(絵画)と野口里佳(写真)による二人展を開催しています。
松本陽子と野口里佳は、手がけるメディアや表現手法、そして世代も異なっています。しかしながら、光がその作品の重要なテーマの一つとなっているという共通点を持っています。むろん光は、内外の芸術において、さまざまな意味で古くから重要な主題となってきました。そのなかでも彼女たちの表現には、光の直接的な表象をめざすという、きわめて困難な試みを見て取ることができるように思われます。展覧会では、二人の作家の作品を、近作を中心にそれぞれ個展のかたちで展示することにより、現代芸術の一つの達成を紹介いたします。