メッセージ

共有幻想 共同幻想の「日本の美しい色風景」

視覚に映る色全てはメッセージ。見たもの全て人それぞれの認識は異なり、次の行動と生き方になる。人は目を閉じ想いを巡らせると「個的幻想」の世界にあり、目を開くと家族、友人、地域の包容力、共助の心と習慣、共有する人の存在で続いてきた「共有幻想」が存在する。

今やその基盤を失ったことが現代日本の混沌とした不幸な状態であり、それを支えて来た国家や民族の法や力である「共同幻想」も、敗戦で大きく価値観も根底から覆り、環境も色彩もアメリカ的になったが和の伝統と上手く噛み合わず、バラックデザインでの混乱が続いている。

環境の混乱は国民の考え方や、政治、文化、子どもたちの未来に大きく影響している。環境が人をつくるのである。ここで今必要なことは国民の感受性と質を高めることにある。

色彩は人間活動の大半を担う五感のまとめ役である。幸せで美しい心の元である色彩環境を取り戻すために、日本色彩学会を挙げて「日本の美しい色風景」に取り組もう。

「生きるべき 道知りてこそ 世の中の 人も人なれ 色も色なれ」

 

東海支部 林 英光

 

 

 

自らの感性できりとる「日本の美しい色風景」

日本色彩学会会員の皆様、新しい楽しみが登場しました。スマホが普及して写真が最も手近な投稿の方法になった今、写真投稿による「美しい色風景プロジェクト」の発足です。

「美しい」というイメージは、抽象的で個人的な感性で、尺度の難しさを秘めています。自分の感性を信じて、楽しんで写真を撮り、要領に従い、送信してください。撮影対象となるテーマは身近にあり、かつ無限です。

「美しい色風景」の反面に「美しくない色風景」があります。美しい写真もアングルを変えたり、トリミングにより美しくない写真に変貌します。対の形で投稿してください。

例えば富士山の名写真に対し、ゴミで汚された富士山の写真を対にすれば、「美しさ」が実感され尺度化の助けになります。

撮影対象は自由です。日本色彩学会のサイトの中の、あなたが著作権を持つ対極的な二グループの写真群が「美しい色風景」の尺度を浮かび上がらせてくれるでしょう。

 

関東支部 永田 泰弘

 

 

 

現代日本の美意識を反映する「日本の美しい色風景」

日本庭園には、借景を活用しながら、日本の自然風景を再現・造形化しようとする美意識が見られます。成句では、山や川の風景の美しさは、「山紫水明」(日に映えて山が紫色に見え、川の水が澄んで清らかである)、海岸の風景の美しさは、「白砂青松」(白い砂浜と青々とした松原)と表現されています。これらの成句では、紫と明(清らか)、白と青という色名と透明感の表現が、心地よい美しさを表しています。

このように日本には、心地よい風景は「美しい風景」と呼ばれ、「(自分と他者の)心地よさ」を「美」と捉える考え方が見られます。つまり、日本には人の心や体を心地よくするモノは、「美意識」と捉えられ、大切にされてきた伝統が古代から継承されています。その美しい伝統が現在、廃れつつある状況を示す出来事も発生しています。日本の美意識には、自然と一体になることで自然美を見出す「優美性」や、単純の中に見られる豊かさ、非相称性、侘び・寂び、艶(つや)、幽玄などがあります。実は、これらの日本の美意識には、人によって微妙な相違も見られます。

今回の「日本の美しい色風景」企画を通して、現代日本の美意識を再発見する気運が高まるきっかけになるよう、協力させていただく所存です。

 

関西支部 吉村 耕治