景色通信Vol.4『今だけの風景~残したい色と新しい色』

  • 環境色彩研究会
  • 2007年03月01日

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景色通信Vol.4
『今だけの風景 ~ 残したい色と新しい色』

JR常磐線で都内に通勤・通学する殆どの人は目にしているはずの不思議な空間をご紹介しましょう。電車が金町駅を過ぎて間もなく、右側の窓には整地されたままの荒野が広がって見えます。線路沿いに2棟残る赤煉瓦倉庫と古びた球体構造物のほかは雑草も生えていません。赤錆びたその姿には凄みを感じるものの恐ろしい程ではないでしょう。煉瓦には年輪こそありませんが、朝焼けや夕陽の中ではオレンジ色と「時の記憶」が重なって、まるで煉瓦倉庫と赤錆びた球体は手をつないで生きてきたように感じられます。私もこの様な建築物景観は壊して欲しいとは思いません。
この葛飾区東金町の三菱製紙工場跡の再開発地域は、アミューズメントを含む大規模な複合商業施設になると聞いています。8,000台収容できる駐車場も整備される予定で、今では何処にでもある没個性的な娯楽施設とショッピングタウンが建設されるとか。環境汚染も懸念される再開発計画が遅々として進まないのも当然かもしれません。この何とも不思議な空間風景はいったいいつまで続くのでしょうか。3万坪もある荒野の向こう、水元地区には昨年完成したばかりの葛飾清掃工場の清々しい姿が新しい時代を感じさせます。(山川やえ子)


その土地独特の時間や記憶を感じさせる赤煉瓦倉庫と球体構造物。


青空に映える新しい清掃工場が清々しい。