景色通信Vol.24『京浜工業地帯をどう見るか』

  • 環境色彩研究会
  • 2010年04月13日

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景色通信Vol.24
『京浜工業地帯をどう見るか』

東京・川崎・横浜を中心として広がる、京浜工業地帯。今、その夜景が注目されている。先日、『工場夜景とみなとみらいクルーズ』というツアーを知り、即日参加。クルーザーに乗り込み約80分、京浜工業地帯の歴史に触れながら運河を回り、みなとみらいの夜景と、工場やコンビナートの夜景も船上から楽しめる・・・という、好奇心くすぐられる内容。乗船した人は、家族連れ、カップル、男性グループと様々。皆、目を輝かせて暗闇から突如現れる幻想的な夜景を存分に堪能していた。特に京浜工業地帯は、ファンが多いとのこと。
コンビナートから複雑に伸びている無数のダクトが、工業地帯として今日まで発展してきた歴史を物語っている。稼動している工場の音に耳を澄ませば、建物郡の中で昼夜問わず働く人々の想いがひしひしと伝わってきそうだ。
製鉄所、火力発電所、天然ガス、石油所など、作業の内容によって建築物の形が違うのだが、それぞれが煌々と多数のランプに照らされ、ひとつひとつオブジェのように浮かび上がっていた。オレンジ色のナトリウムランプや、白いメタルランプが、工業地帯で作業する人たちの安全を24時間照らして見守っている。この工業地帯では日常の照明だが、私たちにとっては非日常で、とても魅力的で価値のある景色に映る。
クルージングによって、夜景としての潜在価値を見出した京浜工業地帯だが、乗ってみて分かる鉄鋼所からの独特な匂いや、煙突からの白い煙たち。夜景の素晴らしさの隣り合わせで存在する公害の問題もある。日本の工業を支えてきた歴史もある。様々な観点で考えたとき、この景色をどうみるのか、今一度深く考えたい。(渡辺佳代)


池上運河付近の製油所


塩浜運河付近の製油所


最後に出迎えてくれるのは、みなとみらいのパノラマの夜景