景色通信Vol.35『仲間川で考えた』

  • 環境色彩研究会
  • 2012年02月02日

[PDF版はここをクリックしてください]

景色通信Vol.35
『仲間川で考えた』

昨年の12月上旬に西表島に旅行して、仲間川のマングローブ林を遊覧船に乗って見物する機会があった。仲間川の河口から上流にかけて、両岸にマングローブ林が形成されて、「仲間川天然保護区域」に指定されている。陸上には道路がないために、川面から観光する仕組みで平底の船が運航している。
マングローブ林は熱帯と亜熱帯の海水と淡水が混ざる汽水域の遠浅の水域に発達するマングローブ植物の林で、水質の浄化と豊かな生態系を育む命のゆりかごになっているが、その脆弱な林は常に破壊に直面している様子が船上からも見て取れた。
仲間川のマングローブ林は、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキ、マヤプシキやサキシマスオウなどの呼吸根、支柱根、板根などをもつ木で構成され、塩分濃度などの条件で棲み分けているとのこと。
下流に入り真近に川岸が見えるようになると両岸に根こそぎ倒れた成木が多数目に入ってきた。台風や洪水により倒れた木からは根が浅く倒れやすいことが見て取れる。この美しく有益な自然がいかに壊れやすいかを改めて認識することになった。環境色彩の面から自然林の緑は貴重であるが、簡単に壊れて行くことに対し、気候の変化、人的な開発行為などに対応する方法を慎重に考えなければならないこと、都市開発においても、手入れの簡単な外来樹種に頼ること無く、その地方の在来樹種を復活することで、本来の生態系を復元していかなければならないと、この旅で考えた。(永田泰弘)


新芽も見える美しいマングローブ林


水辺の倒木


倒木の中のサキシマスオウ


サキシマスオウの巨木