景色通信Vol.39『出石今昔』

  • 環境色彩研究会
  • 2012年06月06日

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景色通信Vol.39
『出石今昔』

小雨の出石は、まだ花も無く肌寒い春であったが、意外に観光客の数は多かった。
兵庫県から委嘱されて「兵庫県出石町旧市街都市景観形成地区指定調査」を行ったのは、1986年のことであった。
出石は、山頂の山名氏の有子山城から麓に城が移され、こぢんまりとした城下町が形成されていた。観光資源としては櫓がある城跡や辰鼓楼があり、皿そばが名物である。
維新後に建てられた町家の造りは二階建てが多く、格子と塗り壁におもむきがあった。赤土の色を残した壁色、鳥の子色の上塗りをした壁、白壁と三色の取り合わせが落ち着いた風情を醸し出していたので、これらの三色の壁色を残す家並みの形成をするように色彩基準を提案した。
25年以上が経過した今の出石は、民家の改装が進み、昔の良さが希薄になっていた。
景観形成上の失敗は、壁の色を指定しながら、材質感をないがしろにしていたことから、家屋の改装や建て替えにしっかりとした指針が出せなかったことにあるのだろう。(永田泰弘)


しっとりと雨にぬれた早春の出石城跡


粗壁のままの土蔵の質感が土地の個性を醸し出す


上手く改装された民家の連続性を考えていきたい


大手前の土産物店どうしのつながりと調和