景色通信Vol.60『ニースのトラムとヴェロブルー』

  • 環境色彩研究会
  • 2015年05月28日

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景色通信Vol.60
『ニースのトラムとヴェロブルー』

ニースには、目抜き通り「ジャンメデュサン通り」の中央にトラム(路面電車)が通っています。「ジャンメデュサン通り」を中心に街を散策していると、丁度朝の通勤時間帯と重なったようで、近郊に居住していて仕事先へ向かうと思われるビジネスマン・ビジネスウーマン、その他の様々なお客様がトラムへ乗り込む姿が見られました。視感測色をする機会は持てませんでしたが、後日写真を基におおよその色彩の傾向を見てみました。ニースの美しい色合いの街を通るトラムは、メタリックなYR系(黄赤系:実際にはベージュ系)とメタリックなN系(ニュートラル系—白〜グレー〜黒:実際には明るいグレー系)で彩られていて、シックなニュアンスを醸し出していました。そして、停留場の柵などはN系(ニュートラル系)のグレーで、目立たせない配慮が見られました。街並み景観についての考え方では、電車やバス、車などの動くものについては、背景の色合いに対して鮮やかであっても良いという考え方が基本になりますが、ニースでは一歩進んで、トラムの色彩に街並みの美しい色合いを活かすような、彩度(鮮やかさ)の低い控えめな色合いが選ばれています。
また、別の公共交通に「ヴェロブルー」青い自転車と呼ばれる、レンタルの公共自転車があり、名前の通りブルーと白で彩られています。街並みの中で映える色彩ですが、背景となる自転車置き場の色彩は、N系のグレーとB系(青系)〜PB系(青紫系)のブルーとのツートーンになっていて、必要以上に目立たせず、尚かつ「ヴェロブルー」駐輪場であることが分かりやすくなっています。

(大倉素子)


色彩あふれる街並みを走るトラムは気品ある渋めの色。


落ち着きのある色とデザインは快適な移動手段。


海と空の色をシンボルカラーとして活用しています。