景色通信Vol.66『島根半島の赤瓦の屋根景観』

  • 環境色彩研究会
  • 2017年09月13日

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景色通信Vol. 66
『島根半島の赤瓦の屋根景観』

昨年の春、故郷の島根県に帰省した時、過去には部分的にしか訪れたことがなかった美保関町、島根町、鹿島町を縦断してみた。
目的は石州産の赤瓦の屋根景観を観て、カメラに収めることである。石州瓦は、古くから島根県西部の石見の国で造られてきた凍害に強い釉薬を掛けた赤瓦である。島根半島のこの三町は松江市に属し、前が日本海、後が山地で、海岸線を一本の道路が通っているだけの漁業集落が点在する地形であり、屋根の撮影はやりにくい条件であった。
石州瓦には主流の赤瓦と後発の黒瓦があり、色むらが多い古い赤瓦と、色も形も均一な今出来の赤瓦があり、黒瓦は少ないものの三種が混在してこの地域の屋根の色彩景観を形成している。
私の好みは、色むらの多い古い赤瓦を使った屋根で趣が深く、派手さも抑えられて海山の景観に調和し、大好きである。
品質管理の行き届いた現代の製法で色むらのある瓦を供給して欲しいと願っている。(永田泰弘)


江戸時代、石州の赤瓦は美保関の港から帆船で遠くの町まで運ばれた。


職人の経験と勘による独特の色だしだった赤瓦。(美保関町)


コンピューターにより安定的な色品質になったが。(島根町)


海の色と対比になり寒さや塩害にも強い石州赤瓦。(鹿島町)