2018年2月24日(土) 2017年度研究発表会ならびに研究会総会開催のお知らせ

  • 画像色彩研究会
  • 2018年02月15日

日本色彩学会 画像色彩研究会
2017年度研究発表会ならびに研究会総会開催のお知らせ

主査 鈴木卓治(国立歴史民俗博物館)

下記のとおり研究発表会ならびに研究会総会を開催します。ぜひご参加ください。

日時:2018年2月24日(土)
研究発表会:13:00~16:10 研究会総会:16:20~17:00
終了後懇親会を催します(17:30~19:30)
場所:国立新美術館3階研修室C(東京都港区六本木7-22-2)
会費:無料.
参加申し込み:下記問合せ先までお願いいたします。懇親会参加の有無も合わせてお
知らせください。
問合せ先:画像色彩研究会 担当幹事 望月宏祐
Email:sigci-event2017@sigci.sakura.ne.jp FAX: 0268-39-0002(長野大学望月宏祐宛)

●研究発表セッションI(13:00~14:00)

1) VR用分光レンダリングエンジンの実装方法の検討
木村薫平,田中法博,望月宏祐(長野大学企業情報学部)
本稿では,仮想現実(VR)空間で分光ベースレンダリングするための
エンジンを実装する方法を提案する.まず,分光ベースレンダリングの
エンジン部分をUnity Game Engine上に実装する方法を述べ,Oculus
Riftを用いてVR空間内で分光ベースレンダリングされたシーンと物体
を鑑賞する方法を述べる.ゲームエンジン内での分光情報の記録・処理
方法とシェーダの記述方法について示し,実際に計測した光源の分光分
布や物体の分光反射率を使用して物体をCG再現する.
本稿の段階では,3Dヘッドマウントディスプレイではなく通常のディ
スプレイ上に実際にX-RiteカラーチャートのCG再現を行い,実物と再
現CGの色差を調べた.この結果,太陽光照明下において,CIE L*a*b
空間上での色差が3.5となった.

2) 小諸城周辺の地形情報の3DCG復元
小井土和宏,望月宏祐,田中法博(長野大学企業情報学部)
本稿では,小諸城をデジタルアーカイブするために必要な,小諸城を
含めた周辺の地形を3DCGで復元する手法を提案する.小諸城は多数の
谷にかこまれている全国的にも珍しい構造をしており,穴城と呼ばれる
ほど城の地形に特徴がある.小諸城は110点以上に及ぶ古文書や延宝二
年(1674年)当時の城下町等を含めた復元図が存在する.本研究では
これらの情報に加え,3次元レーザー計測機による形状計測や,画像計
測など複数の情報を統合して地形を復元する.このとき,小諸城が当時
存在した現在の小諸懐古園に残されている石垣や,樹齢500年以上とい
われる欅を詳細に計測する.最後に,小諸城周辺を含めた地形全体の情
報を3DCG化する.

●研究発表セッションII(14:10~15:10)
3) 光沢布地の色の見えと質感印象に対する色彩情報と明るさ感の影響
何 水蘭,中島 由貴,渕田 隆義(女子美術大学大学院)
ファッション店舗では様々な種類の衣服が展示されているが,特に光沢
を有する布地は照明と展示方法によっては正確な色と質感を認識すること
が難しい場合がある.筆者らの先行実験では,光源の分光分布を変化させ
た場合,光沢布地の色彩情報は色の見えだけでなく,質感印象にも影響を
与えることを明らかにした。
本研究は、光沢布地画像を用いて色の見えと質感印象に対して,色彩
情報がどのように影響するのかを画像実験で検討したものである。実験で
は、色相4種類(R,Y,G,B)の光沢布地画像の(a)L*一定、C*を4段階に変化
した画像から2つを液晶モニタ上に同時に並置提示、また(b)C*を一定と
した4色相の布地画像から2つを並置提示し、被験者は左画像に対して右
画像を色の見え、質感印象に関してSD評価(9段階)した。その結果、布
地画像のC* は色の見え評価だけでなく質感印象にも強く関係しているこ
とが示された。それにはHelmholz-Kohlraush効果による明るさ感増加も
影響しているのではないかと推定した。

4) 再帰的2分割による任意波長を持つ階段関数系の構成の試み
室屋泰三(国立新美術館)
色彩画像の画面上の色変化の大きさ(波長)に対して、色変化の大きさ
を対応させる「波長分析」(小林光夫、2002)として、Haar基底など完全
正規直交系を用いて、その展開係数をもとに絵画画像の色彩変化の特徴を
計量的にとらえることを試みてきた。しかし、画面を均等に分割すること
により、何等かの意味でひとまとまりとしてとらえるべき色変化を分割し
て計量してしまう可能性があった。そこで、分割の方法の自由度について
検討を重ねた。Haar基底のような2等分ではなく、再帰的に3等分する
基底系を考案してきた。しかしながら、均等な分割での限界は明らかであり、
任意の分割を許容する基底系を作ることができないかを検討し、画面上の
矩形領域を4分割する任意波長を持つ基底系を構成できた。
本研究では、より単純な構造を持つ任意波長の基底系を構成することを
試みる。色彩画像Sを縦方向または横方向のいずれかについて2分割した
矩形領域を矩形領域をS’、S”とする。ここで、S = S’∪S”である。また
S’、S”は各矩形領域の面積を示すものとする。
φ_S (x) = (√(S”/(S'(S’+S”))) (x ∈S’); -√(S’/(S”(S’+S”))) (x ∈S”); 0 (x ∉S)。
以降、矩形領域S’ 、S”を再帰的に分割し、それぞれについてφ_S’、φ_S”
を求めていくことにより、完全正規直交系{φ_S}が得られる。ここで分割方法
として、矩形領域内の代表色と各画素の色差の重心を分割点とすることを考
える。この「色差重心」は画面上の構成のある種の「バランス」を与えるも
のと考えているが、そのほか、平均色に対する色差や隣接する画素情報の
色差等の分割のバリエーションが考えられる。
発表では、分割方法のバリエーションと共に基底系の構成を提示し、作品
画像の色変化の特徴との関連について考察する。

●総合討論(15:20~16:10)
●研究会総会(16:20~17:00)