景色通信Vol.70『いざ、奥の細道へ』

  • 環境色彩研究会
  • 2018年03月27日

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景色通信Vol.70
『いざ、奥の細道へ』

三月の終わり、芭蕉は千住大橋で舟を降りて奥州へと出立した。
隅田川に最初に架けられたこの橋はその昔は木橋であったが、現在では美しい鋼タイドアーチ構造となり浅い緑青色に塗装されている。
「行く春や鳥啼魚の目は泪」の矢立初めの句には、これから始まる三千里の旅への期待と不安や門人たちとの別れがにじみ出ている。
千住宿だったこの辺りは、今では伝統工芸などを伝承し製造業などモノづくりの街として荒川ブランドをアピールしている。スマートフォンなどでも見る事ができるまち歩きマップとともに散策するのもいい。北岸の足立区一体も千住隅田川テラスなどまちづくりが進み、水辺や桜をのんびりと歩いて楽しむことができる。
俳句のまちを宣言している荒川区と、緑や季節の変化を大切に心の憩いも推進する足立区。うららかな日和に悠々と流れる川の両岸の住民どうし、自然の息吹を感じながら、暮らしてみたいまちなみ景観を尊重する気持をもちつづけて欲しい。
芭蕉が全身で感じながら心情を俳句にした大橋周辺や千住界隈。その風景は歴史を積み重ねながら、地域の人から人へ受け継がれ変化をつづけてゆく。
いつもよりゆっくりと歩いてみたら、軒先に咲いている沈丁花のほのかな香りを味わうことができた。(加藤進久)


この橋を渡り奥州や房州へと旅立った時代の人に思いを馳せる


柔らかい鋼鉄アーチのフォルムが歩いていても気持よい


季節の移ろいや街の変化を感じながら生活してゆきたい


現代を旅するとしたら芭蕉は、どんな句を詠むだろうか