[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.70
『いざ、奥の細道へ』
三月の終わり、芭蕉は千住大橋で舟を降りて奥州へと出立した。
隅田川に最初に架けられたこの橋はその昔は木橋であったが、現在では美しい鋼タイドアーチ構造となり浅い緑青色に塗装されている。
「行く春や鳥啼魚の目は泪」の矢立初めの句には、これから始まる三千里の旅への期待と不安や門人たちとの別れがにじみ出ている。
千住宿だったこの辺りは、今では伝統工芸などを伝承し製造業などモノづくりの街として荒川ブランドをアピールしている。スマートフォンなどでも見る事ができるまち歩きマップとともに散策するのもいい。北岸の足立区一体も千住隅田川テラスなどまちづくりが進み、水辺や桜をのんびりと歩いて楽しむことができる。
俳句のまちを宣言している荒川区と、緑や季節の変化を大切に心の憩いも推進する足立区。うららかな日和に悠々と流れる川の両岸の住民どうし、自然の息吹を感じながら、暮らしてみたいまちなみ景観を尊重する気持をもちつづけて欲しい。
芭蕉が全身で感じながら心情を俳句にした大橋周辺や千住界隈。その風景は歴史を積み重ねながら、地域の人から人へ受け継がれ変化をつづけてゆく。
いつもよりゆっくりと歩いてみたら、軒先に咲いている沈丁花のほのかな香りを味わうことができた。(加藤進久)
この橋を渡り奥州や房州へと旅立った時代の人に思いを馳せる
柔らかい鋼鉄アーチのフォルムが歩いていても気持よい
季節の移ろいや街の変化を感じながら生活してゆきたい
現代を旅するとしたら芭蕉は、どんな句を詠むだろうか
[PDF版はここをクリックしてください]景色通信Vol.69
『拓殖大学八王子国際キャンパスのもみじ』
高尾の拓殖大学のキャンパスの紅葉がお見事ですよとの中西利恵先生の誘いで、11月28日にカメラをもって出掛けた。紅葉は盛りを過ぎた感じがあり、天候も曇りと、紅葉の撮影には今一つ不満足であったが、この秋はじめての紅葉狩りを楽しむことができた。
正門からキャンパスの中心にかけての坂道に紅葉と桜が植えられナナカマドのしっかりと密植された垣根は建設時に、計画的にデザインされた造園設計を感じさせ、背景となる山の黄葉との対比が美しい景色を見せてくれる。
紅葉の写真に、和歌のもみじを組合せるとどうなるだろうという遊び心で、中西進著の万葉集(講談社文庫)から引用して、機械的に組み合わせてみた。
万葉仮名で「もみじ」は「黄葉」と書き「もみち」か「もみちば」と読むとされている。他の表記を探した処、長歌に一度だけ「赤葉」(もみち)を見つけただけであった。「紅葉」となったのは、いつの時代なのだろうか。
色彩教材にちなんで、木の葉の色の抽出をイラストレータのスポイト機能を使ってやってみた。これも遊び心。来年の盛りの時に紅葉狩りに行ってみたら如何。(永田泰弘)