日本色彩学会関東支部と視覚情報基礎研究会共催シンポジュム「質感知覚とその評価」

  • 視覚情報基礎研究会
  • 2013年10月16日

日常,私たちは多様な質感の知覚を通して現実世界を実感している.物体の素材や表面状態など,生存に不可欠な情報を得るとともに,その物体を評価して価値を決めている.例えば,日本の伝統工芸の漆器にはお椀一つが数万円するものがあるが,その魅力はどこにあるのか?その光沢感を,他の素材を使う技法で再現できないのが現状である.また,近年の塗装技術の進展により,車のボディーの質感が向上し,車の性能が同じでも外装の質感の高いものが売れるという.質感には未知な部分が多いが,ビジネスには確実に繋がっている.また質感の情報は,視覚,聴覚,触覚など個々の感覚により得られるとともに,感覚種をまたがるクロスモーダルな性質を持つ.例えば,ふわふわした犬を見ると,それが犬であることが分かると同時に毛皮のふわふわした手触りも感じる.これは可視光線から引き起こされる視覚から,他の感覚すらも感じることである.
本年度全国大会のプレイベント「色彩学を視座にした多感覚インタラクション―コスメティック科学への展望」が5月に開催された.これに対する反応として興味ある内容であったとの評価を受ける一方で,時間が短くもっと深い内容の話が聞きたい,内容が多方面にわたり焦点が絞り切れていないとの評価が聞こえた.そこで今回はこの反響に答えて,最近の話題である質感を取り上げたシンポジュムを開催する.質感認知は色彩知覚に大いに関係しており,産業デザイン,芸術,工芸をはじめ,衣食住のあらゆる側面において本研究分野が寄与すると信じる.本シンポジュムでは質感知覚の本質をさぐり,どのように質感を評価するのかについて,脳科学,画像科学,心理学,CGデザインの立場から議論を展開する。
日時は2014年1月25日,場所は慶應義塾大学日吉キャンパス第八校舎812番教室で開催する予定である.講師、講演テーマ、時間、申し込み方法等の詳細は次回1月のニューズでお知らせする.さらに,それ以前に関東支部のホームページと視覚情報基礎研究会の案内等で広報を開始する。

関東支部 鈴木恒男
視覚情報基礎研究会 富永昌治