景色通信Vol.68『禮を伝え、技を磨く』

  • 環境色彩研究会
  • 2018年02月15日

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景色通信Vol.68
『禮を伝え、技を磨く』

礼節を重んじ友好と平和を愛する琉球は空手発祥の地である。その伝統文化は古くから沖縄空手道として現代人へと大切に継承されている。
沖縄の建築の特徴としては、気候に適した赤瓦の木造民家があるが、周りを巡らす石積み塀や伝統的グスク建築では、珊瑚や貝殻などが堆積した多孔質の琉球石灰岩が独自の石造文化も形成してきた。天然素材の琉球石灰岩の自然な白色が、ここ沖縄空手会館でも基調色となり風格を出している。柔らかいリズムを感じる石積みの擁壁部分は吸水性が高く味わいも深い。年月を経ることで風雨による自然変化を醸し出しだすことや植物との相性を好む人も多いという。強い日射しによる陰影や通気を考慮した建築デザインにも落ち着きがある。石灰岩の原石は磨かれる技術によって、また個体差のある一つひとつを組み合わせる方法によって印象も変わってくるのだ。
光と風が沖縄の風土を育み人々の暮らしとともにある。自然を慈しむ心が、この地域独特の個性として受け継がれてゆくことを心から望む。
自ら調和し全体を考える禮を重んじることを規範とすることで、地域やまち並みの色は一つにまとまり秩序を形作ることができる。礼節が伝えつづけられる限り、その心は乱れることはなく、色褪せることもないだろう。(加藤進久)


珊瑚素材の自然な白色は年を重ねるごとに風合いを醸し出す


景石としても庭などに配されることが多い琉球石灰岩


直線的な形の外壁と石積み擁壁の自然な曲線が融和する


「五つの四までも」のミンサー柄の舗道にも郷土愛が